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マリア様がみてる イン・ライブラリー
 読書

マリア様がみてる イン・ライブラリー
<a href="shohyou2004.html#tokubetudenaitadanoitiniti">マリア様がみてる 特別でないただの一日</a> 今野緒雪 集英社 コバルト文庫

2005.1.4 てらしま

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マリア様がみてる 特別でないただの一日 今野緒雪 集英社 コバルト文庫

 また番外短編集である。ちかごろではこういう番外編の方がおもしろくなってきた。
 タイトルにあるとおり、本に関する短編ということになる。といってもまあ、雑誌コバルトに適当に書いていったものを集めるにあたって共通する小道具を捜したら本だったということのようで、さほど本の話ばかりしているわけではない。
 考えてみれば、この登場人物たちは意外に読書家ばかりである。これまで登場した本を挙げれば、『剣客商売』、少女小説文庫、『源氏物語』など活字ばかりで、いまどきの高校生なのにマンガの話も流行歌手の話も出てこない。
 世界観自体が、どこか古臭いのである。別に本を読むことが古いわけではなかろうが、しかしこの微妙に現代とは違う世界には、浜崎あゆみを追いかける少女ではそぐわないのだ。
 これには、この作品の下敷きとなっている(であろう)昔の少女マンガの世界が影響している、と思う。
 竹宮恵子や萩尾望都の描いたギムナジウムの世界が、マリみての源流にはある。閉鎖された異常な空間で青春時代を送る少年少女たちは、どこか怪物じみた、しかし純粋な感性を持っている。それを表現するために少年同士の恋愛を描いた30年前の少女マンガの世界が受け継がれているのが、マリみてなのだ。
『風木』の世界にマンガやCDがあるはずもない。だから、傍流とはいえその子孫であるマリみてもそれに準じている。というより、そうした雰囲気を維持するためには、あまり新しいものを描いてしまうわけにいかないのだろう。
 というあたりで、本を題材にとったことは「当たり」である。CDという言葉ですら登場したら違和感があるだろうマリみてワールドにあっては、少女たちの趣味は本、であるべきだった。まあ詩集をひもといてみせるのはやりすぎとでも思ったのか、源氏物語という選択もいい。
 コンピュータは多少出てきたが携帯は出てこない。学園祭の出し物が日本の古典文学。少女たちは、近頃のやけに過激なフラワーコミックスなど知りもせず、図書室に入り浸る。そんな、実は現実には存在しなかった「永遠の昭和」とでもいうべき世界こそ、このシリーズの価値なのかもしれないのである。


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