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十二季節の魔法使い
 ボードゲーム

2012/10/28 13:44 てらしま
十二季節の魔法使い
Seasons
2012年
Régis Bonnessée
Libellud
2~4人
人数×30分(公称60分)

 魔法使いになって、3年間に渡り術を競い合う。ゲームは、特殊効果テキストがたくさんある系だ。いちおうドラフトゲー?
 ドラフトゲーって、日本ではなにやら妙に流行ってるけど、ああいうのではなく。あれらは世界の七不思議フォロワーなんだけど、これはもっと、本家のマジック:ザ・ギャザリングのドラフトに近い。
 なにが違うかというと要するに、ゲーム開始時に、そのゲームで使う全部のカードをドラフトする。最初に、ゲーム終了までの計画が決まってしまうんである。

 まず、9枚のカードをドラフトする。いわゆるドラフトといったら最近は、世界の七不思議流のドラフトだ。
 9枚のカードから1枚を選んで自分のものにする。残りを下家に渡す。これを9回くりかえすと、9枚のカードが手元に残る。
 さて、その9枚を、3枚ずつ3つに分ける。これはそれぞれ、1年目開始時(ゲーム開始時)、2年目開始時、3年目開始時に手札に入る。
 えーつまり、本当にゲーム開始から終了までの計画を最初にたてなければならないんである。
 これ、初プレイでうまくいくはずがない。どういうゲームなのかもわかっていない段階から、ゲーム全体の計画を立てさせられるのだ。
 このゲームは、少なくとも2回は遊んでほしい。初回のゲームがつまらなかったのでなければ……。

 ゲームが始まったら、基本部分の流れはシンプルだ。
 ラウンドの開始時に、プレイヤー人数+1個のサイコロを振る。サイコロにはいろいろな効果がアイコンで示されている。○○の資源を獲得するとか、勝利点を○点得るとか。
 それを、ラウンドのスタートプレイヤーから順番に1個ずつ選んでいく。全員が1個選んだら、またスタートプレイヤーから手番をやる。ここで、選んだサイコロの効果をもらえる。
 ここで、手元の資源を支払って手札のカードをプレイすることもできる。プレイしたカードは自分の前に置かれる。即時に効果があるカードもあるし、毎ラウンド効果があったり、特定の条件をトリガーにして発動するカードもある。
 選んだサイコロによっては、資源を支払って勝利点を得ることもできる。
 これだけ。これだけだ。
 あとはもう、カードの特殊効果が山ほどあると。

 おもしろいのは、季節の移り変わりがあるところ。季節によって使うサイコロが違う。青、緑、黄、赤の4色のサイコロがあって、それぞれ出る資源が違うのだ。
 青の季節では水の魔力が出やすく、地の魔力は出ない。
 また、季節によって資源と勝利点の交換レートも変わっていく。その季節にありふれた資源は安く、出ない資源はより高い勝利点に変換することができる。
 そんな季節の移り変わりを考えながらプレイしていかなければならない。ゲームのタイトルにもなっている。
 ところでこの邦題『十二季節の魔法使い』って、けっこういいセンスだ。ゲームには1年を表す円形のボードが登場し、円の外周にはたしかに12個のマスがある。でもそれは季節じゃなく月だろう。ファンタジー世界とはいえ、ゲームでも3ヶ月で1季節じゃないか……。
 と思っていたのだけど、考えてみれば、3年間会わせれば12季節だ。これ、こんなことを考えさせた時点で成功だと思う。タイトルに「季節」という言葉は必要だし、「十二季節」となっていることでストーリーに興味が湧いてくる。
 原題は Seasons 。このまま『季節』ではゲームタイトルにならないから考えたのだろう。いい邦題だと思った。

 ゲームとしての完成度はというと、驚くほど低い。
 よくあるレビュー記事で使われる言葉でいえば「ダウンタイムが長い」「言語依存が強い」「見通しが悪い」「ダイス」などなど、多くの酷評用語があてはまる。
 とにかく、カードの特殊効果が山ほどあるゲームだ。これを買うような人はわかってて買うだろうと思うけど、こういうの、嫌いな人はたくさんいるだろう。
 凝ったコンポーネントのわりに、カードやボードのデザインもよくない。絵はとてもいいのだけど、ゲームのインタフェースとしては、いいたいことがいろいろある。カードの中で一番目がいく場所である左上に、ゲーム終了時だけ見ればいい勝利点が書かれているっていうのはどうなのかとか。資源チットの色、赤が風、黄が火、っていうのは逆じゃないのかとか。そもそも特殊ダイスの内容を4季節分把握するのは難しいよねとか。
 きりがないくらいいろいろある。
 でも、それはそういうものとして、特殊効果テキストゲームが好きなんだといってしまえば楽しめる。いわゆるコンボもあるし、それをドラフトで組み立てる過程もおもしろい。

 マジック:ザ・ギャザリングなどのTCGの手法を採り入れるというのは、ボードゲームにとって、長年くりかえされている大きなテーマの一つだ。『世界の七不思議』でドラフトが注目されたのも、そうした流れの一部。そして『十二季節の魔法使い』は、ドラフトの解釈を少し変えてみた。
 よりTCG的に、カード間のシナジーやコンボを構築する楽しみを意識した作りになっている。たしかにそのためには、ドラフトはゲーム中ではなくゲーム開始時になければならないのだ。初プレイではゲームにならないという弊害があるのだけど、その分、構築の自由度が強調されている。
 そういうものとして、嫌いじゃない。ゲームとして客観的に評価するなら、ぜんぜん褒められないけど……。

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十二季節の魔法使いを