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片目の海賊
 ボードゲーム

2009/07/13 02:09 てらしま
片目の海賊
Einauge sei wachsam!
2009年
Amigo
Wolfgang Kramer
Michael Kiesling
2~5人(4~5人)
45分
thx to play:game
amazon

 なんか小品っぽい箱とタイトル。海賊というテーマも、地味な佳作みたいなゲームをイメージしてしまう。なんか食指が動かない。なんか。
 でも、そんなわたしの勝手なイメージとは裏腹に、これはおもしろい。システムもいちいち「なるほど」と思わされるし。さすがのクラマー&キースリング。

 とりあえず、やることは「島カード」を買うこと。場に6枚出ていて、値段が書いてあるのでそれを買う。
 買うと、そこに書かれたモノがもらえる。剣と、お金と、宝石だ。
 プレイヤーたちはもちろん海賊なんだけど、それとは別に「片目の海賊」という敵がいる。らしい。片目の海賊も島カードを持っていて、そのカードを奪うためにはカトラスを持って戦わなければならない。というわけで、剣はそれに使う。
 ターンにやることは「島カードの購入」「(剣があれば)片目の海賊が持つ島カードを奪う」というあたり。
 お金は島カードを買うため。カトラスも島カードを買うためだけど、購入と別にやれるから、たくさん持っているとよりたくさんの島カードをとれる。
 ゲームの目的は、宝石をたくさん集めることだ。

 で、すごく感心したのは、同じ色のカードを獲得したときのルール。
 すでに同じ色を持っているカードを獲得したときは、「すべてのその色のカードに書かれている資源を獲得」する。
 前回剣を獲得したのなら、今回は、新たに獲得したカードの資源に加えて剣を獲得できる。何気に拡大再生産ゲームなのである。
 シンプルでわかりやすいし、ゲームに無用なステップを増やしていないし。たしかに拡大再生産を実現しているけど、カードを獲得したときにしか効果がないから、差がつきすぎることはない。これは見事なルールだなあと思った。

片目の海賊 カードにはもうひとつ、宝箱も書かれている。これで、登場するリソースは4つだ。
 お金は、カードの購入に使う。剣は、片目の海賊と戦うために使う。宝石はそのまま得点。宝箱は、ゲーム終了時に各色で1位に7点、2位に4点が入る、いわゆる株券。
 各リソースの役割は明確すぎるほど明確だ。
 宝石で即時得点を目指すか、宝箱でゲーム終了時の大量得点を目指すか。お金で生産力を伸ばし高価なカードも買えるようにするか、剣で枚数を増やせるようにするか。
 最初にとったカードは、その後同じ色をとるたびに効果を発揮する。カードの種類は同じでも、宝石を先にとるか剣を先にとるかで意味がぜんぜん違う。
 つまりこれは、サンクトペテルブルグでいえば、職人と建物と貴族に対応する。アウグスブルグプエルトリコ、あとじつはストーンエイジなど、わたしがここで勝手に使っている(笑)用語でいえば「街系ゲーム」の王道といっていい。
 そういう種類のゲームなのである。
 そういうゲームは長時間ゲーム(最近の基準でいえば)になりがちだ。でも片目の海賊は、そうでもない。なにがすごいって、それがすごい。最近の流行の一派(?)である、いきすぎているくらいのシンプル指向に乗りながら、これをやってるというのがすごい。
 街系ゲームの要素をまとめて織りこんでおきながら、ここまでシンプルなルールとプレイ時間なのである。
 見た目よりすごいことやってる気がする。

 サンクトペテルブルグはすごく好きなゲームなんだけど、最近ああいうゲームはあまり見ていなかった気がする。それは「得点をとろうとしなければとれない」ゲーム性に原因があった気がしている。
 いつ得点をとりにいけばいいのかというのは、考えなければわからない。経験もものをいう。やりこんだプレイヤーや、同系列のゲームになれたプレイヤーに、初プレイの人は絶対勝てないのである。
 そこがおもしろい、というかそれこそがゲームだとも思うけど。カジュアルプレイの場やファミリー向けには向かない。
 また、プレイヤーがどれだけ考えるかわからない。考えれば考えるだけ成果があるからだ。だから、プレイ時間が確定できない。
 片目の海賊も、あるていどはそう。考えなければ勝てないだろう。でも、はじめからカードでバランスがとられているから、漫然とやってもそれなりにプレイできる。そういうふうにできていると思う。
 その中で「俺は宝石を集める!」という意志を示したり、2位狙いで宝箱をとったり、いろいろなプレイができたりもする。
 何気にすごいと思う。おもしろい。

cut4.jpg

片目の海賊を