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白い花の舞い散る時間
 読書

白い花の舞い散る時間
友桐夏 集英社コバルト文庫

2006.05.24 21:28 てらしま

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 顔も本名も知らないチャット仲間の5人が、オフ会で会うことになった。場所は、山奥にひっそりと建つ洋館。四泊五日の期間中も本名は明かさないという約束で、奇妙な休日がはじまる。
 という、なまぬるそうな話。いや、しかしね……。
 登場人物はそれぞれに複雑な過去を持っているらしく。それが、チャットでしか知らなかった人たちが匿名で顔を合わせるということは、そういう自分の境遇を誰かに聞いてほしかったのだということで……。
 気の合う友だちとの楽しいイベントのはずが、少しずつ、様相を変えていくことになって……。
 というあたりまではネタバレじゃない?
 ネタバレはしない方針なのでくわしくは書かないけど。

 なんとも、人を喰ったミステリーだった。わたしの知るかぎりで似た作風の人を挙げれば、乾くるみ。あれほどギミックを作りこむわけではないけど。
 基本的に、こういうの好きだ。
 コバルトで出てるのが意外といえば意外だけど、考えてみればむしろコバルトらしいような。

 というかこのさい、逆に薦めておいたほうがいいかもしれない。これを読んでおもしろかった人は乾くるみを読め。

 共感とか感動とかはまるで省みず、読者を化かすことに全力を注いだ、酷薄な書きっぷり。いかに魅力的な登場人物でも、将来は決して約束されない。
 ほんとに乾くるみ系なのだ。そんな系があるんかというのはともかく。
 明かされる背景設定が少し安っぽいのと、説明がわかりづらい感じがあったのが残念なので、そのあたりは次回作に期待。
 ……うーん、かなり期待できる。

 つーか続編出てる。リリカル・ミステリーシリーズ? 読みます。

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