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ゲームデザイン脳
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ゲームデザイン脳
桝田省治 技術評論社

2010/04/13 05:56 てらしま

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 あまり、コンピュータゲームはやらないほうだと思うけど。それでもこの人の名前は知ってる。桃太郎伝説とか、電鉄とか、天外魔境とか作った人だ。
 あとリンダキューブとか俺の屍をこえてゆけとか。そういう、コアなコンピュータゲーマーに人気ある人。
 そのあたりプレイしてないので、ほとんど聞きかじりなのだけど。いわゆるドラクエやファイナルファンタジーとは違う、毎回新しい、ちゃんとゲームとしてのデザインを考えてくる人というイメージを持っている。
 その人が書いた、ゲームに関する本というわけで。基本的にボードゲーム専門のわたしではあるのだけど、この名前は気になった。

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 あと、この人は小説も書く。実現しなかったゲームの企画がネタらしいのだが『ハルカ』とか、わりと好きだ。
 そのあたりも期待していたところではあった。
 文章を書くというのはじつは特殊技能だ。世の中に出回っているハウツー本だの解説書だのというのは、ほとんど文章の体をなしていない。と感じている。いくらいいことが書いてあっても、文章になってないのでは評価できないという思いがあったりもする。
 小説を書ける人なら、そのあたりは安心できるんじゃないか。
 と思ったのだけど。
 その面では期待はずれだった。まあ、ゲームデザインに関する思考過程についての、メモ書きていどのもの。
 わりと、各話題が唐突に登場する。考えを整理してまとめた感じも少ない。
 いちおう、全体をまとめるストーリーは与えられているのだが。記事自体は、ブログやtwitterの文章を読んでいるようなものだ。
 ひとつの作品としての評価は低い。
 とはいえ、着想から調整までの流れがあり、最後にゲームに関する哲学が語られる、最低限の構成はちゃんとある。少なくとも、ブログよりはいいだろう。

 辛口の評価にならざるをえないのだが。しかし、書かれている内容はたいへん興味深い。
 ゲームデザインの体験談とか、企画を作るまでにどんな思考過程があったかとか、そういう内容が非常におもしろい。
 この人は、本当に「ゲーム」を考えてると思う。それも、本物のゲームだ。
 コンピュータゲームという未定義の現象に限定したために論旨が崩壊してしまう、よくある「ゲーム論」とはちがう。それは強く感じる。
 コンピュータゲームは、ゲームであることを考える必要がない。
 おもしろい小説を画面で読ませれば、ユーザは感動する。すごい映像があればCMを作れる。コンピュータ「ゲーム」にしかできない体験というのはあるはずだと思うのだけど、そんなことは考えなくても商品を作れてしまう。
 枡田省治は、しっかりとそこを考えていると感じる。この本では、プリミティブな子供の遊びなどにも触れられている。
 いや、他の連中が考えてないというわけではなく。むしろ、わたしが住んでいるボードゲームの世界とは、デザイナーの層の厚さが4ケタは違うわけで(笑)。レベルはぜんぜん違うはずだ。
 むしろ、そっちの世界ではこんなこと考えてる人がいるのかと。

 結論から書く。僕が思う、テレビゲーム向きのネタとは、“趣の異なる前向きなジレンマが適度なストレスをともなって、適当な頻度で繰り返しプレイヤーに提示され、その意思決定の結果によって、状況が変わりえる構造を有する事象”だ。

「結論から書く」と書いてある以上、前後の文脈があるわけで、ここだけ引用するのもアレだけど。
 著者のブログに、この部分の試し読みが掲載されている。興味があれば、むしろそちらを見てください。

 これはわりと、ボードゲームでもそうだろうなと思うわけで。
(ただしボードゲームの場合、さらに条件が厳しい。勝敗を決めるのがボードゲームだ。「前向きな」という部分は、さらに明確に「勝利の可能性を残した」でなければならない)
 コスティキャンのゲーム論的な話題だなという気もする。コスティキャンはもともと、コンピュータゲームにもけっこう言及している。そっちのほうが多いくらいだ。
 枡田省治が、そういうところを明確に意識しているかどうかはわからない。でも、そのものではなくとも、少なくともあれくらいまで深めた思想があると思う。
 だからこその思考過程がおもしろい。
 きっと、まだ理論というほどにはなっていないのだろう。職人の頭の中が、きれいに整頓されている必要はない。だからこの本も、きれいにまとまったかたちにはならなかったのかもしれない。
 第3章の章題は「かんがえる 哲学/裏技」。これが哲学ではなく科学か工学になったら、もう一度まとめてほしいという気もしていたりする。


ityou -2010/05/16 23:53
「桝田省治」ですよー


てらしま -2010/05/17 00:19
 ご指摘ありがとうございます。修正しました。


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