2006.09.03 09:56 てらしま
続巻にあわせて文庫になってたので読んだ。オススメです。まあやっぱり、落語ってのはおもしろいのだ。
主人公は金髪の不良少年。高校を中退して、元教師の勧めで落語家に入門することになってしまう。よくある、あれである。手のつけられない乱暴者だった少年に、刑事がボクシングを勧めるみたいな展開だ。しかしそれを落語でやってしまうんだからすごい。
はじめのうちは落語になど興味を持っていない主人公だが、そこはそれ、師匠の落語に感動したりとかいろいろあって、実は天才だった才能が開花してきたりもして、落語家として成長していく。青春のお話である。
7章のそれぞれが短編のミステリになっているので、なぜかいきなり殺人事件が起こったりとかするんだけど、まあ雑誌連載の短編ミステリらしく、そのあたりはさらりと解決してしまう。それでもちゃんと、それぞれの事件が古典落語の演目に見たてられているあたりがさすがだ。
そういうミステリ部分とは別に主人公の青春物語が、また意外なほど素直な話なんだが、語られる。落語界のこととか、演目の話とか、ほんとに好きな人じゃなきゃ書けないなこれはという描写もあり、いまさらこういっちゃなんだけど、田中啓文おもしろい。