つり革につかまることができない場合、自分の足腰で立っていなければならないのである。
必要な条件はこうだ。
どんなにふんばったところで、この条件から外れれば人間は倒れる。
つまり、揺れとは逆の方向に重心を動かす必要があるのだ。
そのために使うのは膝である。
人間の重心は腰のあたりにあるので、これを効率よく動かすためには足首か膝の関節を使う必要がありそうだけど、足首の関節はそれほど自由じゃないし、かけられる力も弱い。残るのは膝しかない。突然の揺れに対処できるように、膝を少し曲げて立つ必要がある。
足は少し開いたほうがいい。あと、少し内股気味に。そのほうが、両足の接地面の間の面積が大きくなるし、かかと間の距離が開くので安定する。
……偉そうに解説してみたけど、これはちょっと考えればあたりまえである。そりゃーそうだ。
だが、これが難しい。なぜかというと、人に押されるから。
なにしろ、目の前でつり革につかまっている人は、揺れの慣性力にまかせてゆらゆら揺れている。この人たちの揺れは、つり革のない人からすればまったく逆方向なのだ。
ヘッドホンの音漏れも携帯電話も、わたし自身は迷惑と思ったことがない。まあ気持ちはわからんでもないから、これを否定するつもりもないけど。
でもそんなことより、つり革につかまってる人たちの揺れかたのほうが、よほど迷惑だと思うのです。