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アクションバイブル
 読書

アクションバイブル
早瀬重希、木川泰宏 マール社

2003.10.14 てらしま

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 シュワルツェネッガーは州知事になるには筋肉が足りないと思っていた。しかしそれは間違いだった。僕らにとってのシュワルツェネッガーとは、ターミネーターであり、コナン・ザ・グレートであり、今でもビデオで見ることができるあのマッスルだからだ。彼の記憶は映画として残っているのであり、現在の姿は関係ない。全盛期に撮られた映像が無党派層をとりこみ、シュワルツェネッガーを州知事にした。現代の選挙戦はこうあるべきなのかもしれない。
 選挙公約とか、中身はどうだっていいのである。重要なのは見た目と、イメージだ。さて、そうしたものを専門としている人たちがいる。アクション俳優だ。
 この本は、アクション俳優のためのアクション指南書。なにを読んでるんだという感じだが、こういう世界もあるのかと思えばまあ興味深くはある。
 本物の格闘技では相手に悟られない動きが必要だが、アクションでは逆だ、とこの本はいう。パンチを繰り出すにも、あえて大振りでやらなければならない。そのとおりである。大振りで、わかりやすく「パンチだ」と思っているところにパンチがくるから視聴者は楽しいのである。本物の格闘技の、わかりにくい動きでは映像としておもしろくなくなってしまう。
 ボブ・サップはなぜ人気があるのか。それは、サップのパンチが大振りでわかりやすいからだと思う。彼はアクション俳優と同じことを、本物の格闘技のリングでやっている。振りかぶり、パンチだと誰もが思うところにパンチがくるからおもしろいのである。
 観客のカタルシスを促すためにどう動いたらいいかを解説するのがこの本だ。パンチがくりだされた、それがあたって敵がのけぞった、そういう一つ一つの動作を、いかにわかりやすく観客に伝えるかということを専門とするアクション俳優のための本。
 紹介されるのは日曜日の朝に見慣れた動きばかり。あの動きにはこんな意図があったのかと、いろいろと発見があっておもしろかった。また、このアクションにはこんな危険があるというようなことがいちいち書かれており、なんというか、アクションを見る目が変わりそうなのである。ただ漫然と見ていたアクションに、血が通ってくる思いがした。
 教科書として出来がいいとはいえない。説明が少し独善的というか、親切とはいえないからだ。そのため、ときどきなにを書いてあるのかわからなくなって困った。しょせんアクション俳優が書いた本だからしょうがないとはいいたくないのだが、もう少し読者のことを考えてほしかったかな。
 でも紹介される一つ一つの技の写真には説得力がある。というか、全部見たことのある(日曜朝に)動きだから、私の脳が勝手に補完しているのかもしれないが、そうだとしても、こうして写真で、動き方のコツなどと一緒に紹介されるとまた新鮮な感覚がある。
 完全に非現実のものと軽く見がちなアクションシーンだが、あれも人間がやってるんである。


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