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サッカー ファンタジスタの科学
 読書

サッカー ファンタジスタの科学
浅井武監修 光文社新書

2003.2.28 てらしま

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 サッカー狂の研究者たちが書いた、サッカーの科学の本。わりと面白い。
 とはいってもまあ、面白いのは始めの2章だけで、残りの後半は読む必要がない。これを読むくらいならコンビニで日刊スポーツを買ってきた方が有効な時間の使い方だ。
 その面白かった部分。まず第一章は、基本的な力学からサッカー選手の身体の使い方を説明する。「キック力とはなにか?」など、たしかに興味深い部分を、力学としての観点からモデル化し、実際に測定してみたりもした研究成果を紹介している。
 キック力を決めるのは筋肉なのか、技術なのか。わりと気になるところでしょう? むろん、たぶん両方が必要なのだとは容易に想像できる。では具体的にはどの部分の筋肉が必要なのか、どんな技術が必要なのか。これはテレビを見ていても、実際にボールを蹴ってみても素人にはわからない。
 この本の筆者はそういうところの研究者である。この本では、かなりわかりやすく研究成果を解説してくれている。
 理系のサッカー狂にはおすすめだ。まあ、本当に理系の人間には少しわかりやすすぎてまわりくどい部分もあるだろうが(『トルク』、『角運動量』という言葉が出てくるのに『積分』という言葉は出てこない)、そこは一般向けの本としてはしかたがない。
 書いている人たちがまずサッカー狂なのだ。それが行間に滲み出ている。まず冒頭がこれだ。
 
「サッカーが人生だって?」「とんでもない! それよりも大切だ!」英国の有名なジョークの一節である。このジョーク、けっして古き良き時代の昔話ではない。十年一日のごとく、今この瞬間にも地球上のあらゆる地域でこのような人達が増え続けているのである。それは、アジア初のW杯共同開催前、後でも変わらないはずだ。
 
 2002ワールドカップの直前に書かれた本なので、話題が古いのには目をつぶろう。とにかく始めの2章に関しては、書いている連中が一番楽しそうだと思った。
 ただ、これを逆にいうと、理系でもサッカー狂でもない人間には薦めてもしかたない本ということでもある。だったら微分も積分も前提知識として説明してくれりゃその方がわかりやすい気もするのだが、さすがに一般向けの新書としてはそういうわけにもいかないんだろう。
 全体としては、もう少し踏み込んで細かいところまで知りたかった。概略にもならない紹介程度のところでそれぞれの話が打ち切られてしまうので、まるでそういう研究を紹介するパンフレットくらいのノリになってしまっている。特に後半は、スポーツ新聞を読んでいれば素人にも書けるくらいの内容しかない。
 私は買ってしまったが、自分が理系でサッカー狂だと思う人なら、1章と2章を立ち読みすれば充分。特に2章、ストイコビッチのインサイドキックを解析するくだりはエキサイティングだった。


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