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スティーブンソンロケット
 読書

スティーブンソンロケット
 

2001.6.1 てらしま

 このタイトルからわかる人はわかるのだと思うが、イギリスの鉄道黎明期を題材にしたゲームだ。
 鉄道ゲームの伝統にのっとって、乱数要素は少ない、というより最初の席決めにしかない。線路、株式、配当といった各リソースも、『1830』を彷彿とさせる、極めてオーソドックスなものである。
 あまり目を引くところのない鉄道ゲーム、といってしまえばそうなのだ。しかし……これは本当に鉄道ゲームなのだろうか?
「カタン・ショック」以後、ドイツのボードゲーム(イコール世界のボードゲームといっていい)は明確に一つの指向性を持っている。「単純化、短時間化」というのがそれだ。『スティーブンソンロケット』は、まさにその流れの申し子といえるゲームだ。
 例を示すと……、汽車は線路の上を走らず、線路は平地を走った汽車の後ろにできる。駅舎は建ててから線路が届くのを待つものだ。どんな大会社でも、地方の零細路線に吸収される。
 そんな世界は、ゲームの中にしか存在し得ないだろう。
 抽象的、という表現を書いておくべきだ。ルールの単純化、プレイ時間の短時間化、その結果として抽象化を推し進めた結果でなければ、決して生まれてこないゲームなのだ。もちろん、鉄道ゲームをやっているという実感はまったくないのである。
 面白くないというわけでは決してない。むしろ、2000年のドイツゲームの中ではいいゲームだろうと私は思う。コンポーネントも、地味だがスタイリッシュだ。しかし、ドイツゲーム賞の候補にもあがらなかったらしい。
 それも、理由はわかる気がするのだ。ゲームの雰囲気やイメージという点で、『スティーブンソンロケット』はあまりに先鋭的すぎる。しかも、地味だ。
 抽象化に邁進してきたボードゲームの世界を体現している。面白ければいいのかもしれないが、しかし、本当にそれでいいの? なんか疑問が残る。


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