2002.1.24 てらしま
あいかわらず(といってもしばらくエド・マクベインは読んでいなかったが)、現実のものにきわめて忠実と言われる警察の調査過程と、刑事、犯人の思いとが強く弱く絡みあう、見事な職人芸である。
16歳の少女が、運転免許の教習中に女性を轢いて殺してしまう。同乗していた教官はなぜか泥酔状態。そして被害者はなんと、この教官の妻だった。
殺人事件として始まった捜査。誰が、なぜ殺したのか。バツイチのベテラン女性刑事ケイティは、仕事のために離婚を選ばざるを得なかった自分の思いを抱えながら、一つ一つ真実に近づいていく。
フーダニット、ハウダニットも重要だが、一番重要なのはホワイダニットだと私は思ってしまう。だから、まず刑事や犯人の人間模様が面白いエド・マクベインは好きなミステリー作家の一人なのである。
ということは私は、ミステリーとしての部分はあまり読んでいないのかもな。
ノヴェラということで、話は短くコンパクト。この文字数、行数、厚さで500円というのは高いと感じてしまうほどだ。
しかしこれほど短かかったとは思えないほど、それぞれの登場人物たちが活き活きと思い返せる。ミステリーとしてはなんということもない、起伏も少ない話なのだが、読後になんとも味わい深い余韻が残った。