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モンスター・ドライヴイン
 読書

モンスター・ドライヴイン
ジョー・R・ランズデール 尾之上浩司訳 創元文庫SF

2003.4.9 てらしま

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 いつものB級ホラーオールナイトでバカ騒ぎするため、ドライヴイン・シアターに集まった主人公たち。上映作品は『アルバート・ショック』『死霊のはらわた』『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド ゾンビの誕生』『大工道具箱連続殺人』『悪魔のいけにえ』の五本。しかしそこに血の色の彗星が落ちてきて、ドライヴインはB級ホラーそっくりの異世界になってしまった!
 どう異世界かというと、青い稲妻を浴びた人間がグロテスクな化け物に変身してしまったり暴徒と化した人間たちが人肉を喰らったり。そんな狂気の中、主人公たちは友情と人間性を武器に戦う。
 ひどいバカ話かと思っていたら、意外にまじめだ。B級ホラー風モンスターも、たくさん出てくるわけではない。
 プロットを見て思い出すのは『ロッキーホラーショー』とか『フロムダスク・ティルドーン』とか。もっと適切なのは『インベイジョンアース』か。しかしこれはもっとまともな話。げらげら笑えるバカ話を期待すると肩すかしを喰う。
 グロテスクなモンスターは、むしろ狂気にかられた人間たちで、周りの人間たちが人肉を喰ったり悪魔がくれるポップコーンを喰ったりしている中、主人公は人間の尊厳を信じようとして奮闘する。
 なるほど、青春小説だった。『ロッキーホラーショー』ではなく『バトルロワイアル』だったのである。とんでもない状況設定がウリのネタ小説かと思っていたら、実は青春小説としてそれなりに感動できてしまう、という構造には、なにか万国に共通のウケる要素があるんじゃないかとも思う。
 むろん、私個人の趣味としては徹底的にバカな方が好きだ。せっかくなら本物のゾンビやホッケーのマスクをかぶった怪人も出してしまえばいいのに。この本でいえば、私はそう思う。
 だが『バトルロワイアル』だって悪かなかったし、この本もけっこう面白かった。
 なんとなくだまされているような気もしないではない。B級ホラーというキャッチフレーズがなかったら、私だってこの本を手にとってはいないし。だが、面白いものは面白い。
 どんなに不当なやり方だとしても、キャッチセールスというのは実に有効な手段なのだと思う。もっともそれがゆるせるのは、それなりに面白い内容がともなう、この本のような商品に出会った時だけだろうけど。


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