2003.5.22 てらしま
東洋風の異世界で、七つの国が覇権を競っている。そのうちの一つ、七宮カセンのお姫さまに祭り上げられた一二歳の少女の話。
印象としては、よくできた同人小説という感じである。それも、ウェブに公開されているたぐいのものだ。頻繁な改行、改段のしかたもそうしたものを思い起こさせる。行間に<p>や<br>などのタグが見えてきそう。
自分でもオリジナル小説を公開している手前、あまりいってもしかたないが、ウェブ小説でおもしろいものに出会うことは滅多にない。プロじゃない人たちが勝手に公開しているんだから、これは当然である。
そんな中で、なぜか、ウェブ小説には傾向があると思う。十二国記風とでもいうか、どこか異世界を舞台にしたファンタジーで、王女や王など各国の要人が主要な登場人物に名を連ねており、主人公はその世界の歴史の流れの中で数奇な人生を送る。そうした内容の小説が、なぜかとても多い。こうなると、もはや「ウェブ小説」というジャンルを一つ設立してしまってもかまわないんじゃないかとさえ思う。
しかし、やはり同人なので、平均的なレベルは低い。このジャンルから傑作が生まれる可能性は少ない。
私自身はさほどウェブで小説を読むことが好きなわけでもなく、さほどの思い入れもない。しかし、もったいないとは思うのだ。日本でこれだけ書かれている分野は他にないのだから。
そこで、この『七姫物語』である。別にこの小説が特別な世界設定を持っているわけでもなく、キャラクターに目を引かれるわけでもない。しかし、私個人の感想として、あるていど出来のいいウェブ小説に出会えたと思うと少しだけうれしかったのだ。