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図説ロケット
 読書

図説ロケット
野田昌宏 川出書房新社

2001.9.17 てらしま

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『図説ロボット』は、世界でもトップクラスという網羅率を誇る野田昌宏パルプSF誌コレクションの中から多くのカラーイラストを収録し、ロボットの歴史をひもとく良書だった。今回はそのロケット(というよりは宇宙船)版。
 相変わらず、野田昌宏のコレクションに対する情熱には敬服するしかないし、SFのファンとしては、そういう人が精力的にこうした本を出版してくれるのはとても助かる(?)。
 中身の方はもう期待通り、絢爛豪華な表紙絵、挿絵の数々が次々と紹介され、思い入れたっぷりの野田節でそれを語ってくれている。
 変に評論家ぶることもなく、自分の体験を中心にした語り口は、現実に膨大なコレクションを目の当たりにしているだけに、かえって説得力を増していて、そこで「SFは絵だ!」といつもの主張をやられるともう、納得するしかなくなってしまうわけである。
「おわりに」に書いてあることだが、ロボットが常に物語の主役だったのに対して、ロケットというのは実は、あまり表舞台に立つことがない。というより、初めのうちはロケットを主役とした物語も多かったけど、そのうちすぐに現実の宇宙開発の方がSFに追いついてきちゃった、ということらしい。
 宇宙空間の難しさは作家たちの想像を絶していて、そうなると「サイエンスフィクション」と標榜している手前いいかげんなことも書けず、だんだんとロケットについての詳しい描写は減っていき、やがて「ロケット」であるという事実だけが描写されるようになる、というシミュレーションは納得できるものがある。単純に宇宙船は登場して他の星へ冒険するが、『宇宙への序曲』のような宇宙船を開発する話は、パルプの世界にはあまりないようだ。
 とすると、ロボットやAIがかなり現実的に開発されるようになった現在では、ロボットですらSFには登場しづらくなる、ということになるのだろうか……。
 なかなかに難しいものがある。
 しかし、行き詰まろうがなんだろうが常に男の興味を曳く題材が、美女のあられもない姿であることは今も昔も変わりがない。本書の第3章「宇宙には美女がよく似合う」を眺めながらそんなことを思い、なんとなく安心してしまった。


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