2003.3.15 てらしま
ティム・バートンに映画化してほしい作品ナンバー1。
と思ったが、考えてみればこっちの方が時代が先。してみると、すでにバートンはこの世界を映画化したわけか。たぶん『ビートルジュース』か『ナイトメアビフォアクリスマス』あたりで。
内容はまさにティム・バートン映画の世界(もちろんブラッドベリの世界といいかえるべきだが)。幽霊や妖怪が出てくるけどあまり暗さがなく、賑やかで楽しい。
人間の子供であるティモシーは、魔力を持つ「一族」に育てられた。一族というのは幽霊や魔女やミイラなんだが、本書の中では曖昧に「一族」という言葉で一括りにしてある。
そんな環境で育ったティモシーは、自分が生きていることに劣等感を持ったりもする。死んでいれば魔力が使えたり空を飛んだりできるとくれば、その気持ちもわかるでしょう。
そんなこんなで、ハロウィーンの夜に世界中から一族が集まってきたり、世界で戦争が始まったりして、いろいろ起こる。
『火星年代記』とかと同じような、いろんな短編の間を短編で埋めた形式の本になっている。だから筋道の通った一本の話というわけにはいかない。でもブラッドベリはおもしろい。小説のよさってストーリーじゃないなあと思う。
ストーリーはないが、ブラッドベリ一流の詩情は健在だ。歳をとるにつれて詩的な文章に磨きがかかっている。
詩的な表現は時に読みづらいほどで、個人的にはここまでやらなくてもいいとも思う。特に翻訳で読む立場としては、原語の表現が難しいほど翻訳の文章の質も落ちているわけだし。
しかし、読んだ文章が頭の中で映像に翻訳される、この文章力はすごいと思う。たぶんこの本を読んだ人はみんな同じ映像を思い浮かべただろう。もしその人が、あとで初めて『ビートルジュース』を見たら、「どこかで見たことがある」と感じてしまうはず。