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学園戦記ムリョウ
 読書

学園戦記ムリョウ
 

2002.7.4 てらしま

 最近(といっても2月ほど前だが)ビデオの最終巻が出て、レンタルでまとめて見た。私的には、近年のアニメでは『NOIR』に並ぶくらいのお気に入りである。いや、話がSFだからそれ以上かも。
 学園で戦記というくらいだから当然、主人公は学校に通う中学生で、そこに宇宙人が攻めてくる。
 考えてみれば「学園戦記」という一つの言葉からここまでのことがわかってしまうというのも面白いが、日本人ならばたぶんみんなそう思う。これまでの小説やアニメ、コミックなどの、長い歴史からそういう連想が生まれるのだろう。ただ、それをストレートにやった『絶対無敵ライジンオー』などとは少し、描き出されるものの焦点の位置が違う。NHKらしく、もっと『中学生日記』とかに近いかな。
 宇宙人はただ謎の存在ではなく、ちゃんとそれなりの事情を持って地球にやってくるし、その背後に宇宙の歴史がある。宇宙人と戦うウルトラマン役の存在は「シングウ」という巨人で、その力を使って大昔から地球を守ってる人たちが主人公の住む町にはいる。子供たち、村の大人たち、銀河連邦の宇宙人たちと、それぞれが自分の立場で事件に関わっていくのが描かれていくわけである。
 監督の佐藤竜雄というのは『赤ずきんチャチャ』(演出)、『飛べ! イサミ』、『機動戦艦ナデシコ』と注目作を次々と撮ってきた人。そんな彼が、もう撮りたいものを撮ったという感じが出ている。しかもいま調べたら、『ねこぢる草』もこの人だ。最近面白かったアニメを上位から並べていくと、半分くらいがこの人の監督作品で埋まってしまうに違いない。
 とにかくいろんな人が出てきて誰も悪人がいないというのが監督の特徴だが、今回はその中でも人の数が多く、ただの中学生から銀河連邦のえらい人まで、さまざまの立場が描かれる。
 中学生と異形の宇宙人、なんていうと条件反射のように『新世紀エヴァンゲリオン』を持ち出してしまう人たちというのはいまだにいる。だが少なくとも、『ムリョウ』を見てそれをいってしまう人はアニメを見ていないと思う。
 たしかに、両者ともに描かれるテーマは「宇宙時代の人類の進化」である。要するに『2001年宇宙の旅』だ。スターチャイルドである。
『エヴァ』は常に、一撃ですべてを解決してしまう華麗な結末を目指していた。A・C・クラークが代表する(のだと思うのだが)、奇跡を信じる神秘主義っぽいSFの流れの上に乗った作品だったのだ。まあ「福音」なんだし、そうやってキリスト教思想がテーマに関わっているのは悪いことではない。
 対して、『ムリョウ』は、もっと地に足のついた地道な方法で、人類の進化を描く。どれくらい地道かというと、体育祭の応援合戦から始まってしまうくらい。実際、70年後の未来とはいえ中学生にとっては、宇宙人の襲撃も学校行事も同じくらい重要だろうし。
 しかし、一方ではほとんど神様といっていいウルトラマン的巨人が戦っているというのに、そうしたことのすべてが連続して見えるというのはさすが『飛べ! イサミ』の佐藤竜雄。無宗教の日本人だからかどうかわからないが、いきなり神秘を持ち出されるよりもずっとカタルシスが深かったのはたしかだ。


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