2006.07.03 22:52 てらしま
ハルヒが大流行だしってことで。見極めるために別のシリーズを読んでみたくなるのがヒネクレモノというものだ。
まずあらすじを紹介。
超能力者を隔離するために山の上に建てられた学校。主人公はそこで暮らしている。
あ。あらすじってこれだけか。
話はもちろんもう少しいろいろあるが、重要な部分は多くない。SFっぽいネタは、可もなく不可もなし。しかしそこは要所ではないんである。
書きっぷりはハルヒとおんなじ。物語はあまり動かず、キャラクターと、キャラクターを中心においた世界の説明だけで大半のページが埋まっている。起承転結とか、切り出してみればたしかにあるのだが、あまり関係ない。
これをやれるのはつまり、いわゆる「魅力的」なキャラクターと、現代ジュブナイルのトレンドに合致したスラップスティックがあるからで、裏にある世界設定などは味つけにすぎない。むろんそんな味つけの部分でしか差別化できないほど極まっちゃってるのがこのジャンルだが。いやしかし単なる味つけであってもネタがSFであることにかわりはないわけだが……。
なにがいいたいかといえば、それはもちろん、そういうものさえあればSFをやれるんだってことである。
ネタとしては、ハルヒよりもSF寄りの話である。
まあハルヒだってまじめにやれば充分SFになるんだが、あれは実は、もはや使い棄てるしかない古いネタばかりを集めたパロディであって、もしもまじめなSFとして書かれてしまったら古臭くて読めないものになっていたはずのものなのだ。
……ただし、そんなことを感じるのはSFファンだけという可能性は充分にあるわけなんだが。
「学校を出よう!」だってそういう雰囲気は強いが、印象としては、もう少しSFネタにこだわっている感じがある。
というより、SFにかぶれているというべきか。
現代アメリカ流のSFを書くには、日本では現実的ではないほどの調査が必要になると思う。だがこのやりかたなら、使い古されたSFネタをリサイクルできる。調査はぜんぜん必要ないのだ。
よくいう「浸透と拡散」の結果薄まったSFが、SFを冠さずに出版されている。そんな中で、こういう本を出すSF好きが、妙なヒットを飛ばしてみることもある。SFファンは喜ぶべきなのかどうか、非常に微妙なところだが……。
いやしかし、ないよりマシと思わなければいけないか。なにより、これはまだ純真な子供が読むジュブナイル文庫なのだから。洗脳の機会ととらえるべきだ。