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宇宙のランデブー
 読書

宇宙のランデブー
アーサー・C・クラーク 南山宏訳 ハヤカワ文庫SF

2001.5.29 てらしま

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 宇宙から、異星人が建造した謎の物体「ラーマ」が飛来する。それを調査するため降り立った人々の冒険を描いた話。
 物語自体はなにしろこれだけ。驚くべき単純さなのである。
 茶筒型のラーマの中は空洞で、自転によってそこに重力を作っている。そこには異文明の産物らしきものが多くあり、その謎を解くため、様々な建造物の中を調査していく。そういう話だ。
 ハードSFとしてのネタでいえば、ほとんど古典的なニュートン物理学しか出てこない。量子論も、相対論も、この物語には必要ない。ラーマの構造はスペースコロニーと同じで、もちろん、ニュートン物理だけで実現可能だ。またラーマは遠くの星から飛来するわけだが、これは何千年もかけてゆっくりと飛んでくるから、相対論など考える必要もない。
 いわゆる超科学に類するものも、ほとんど出てこない。それでいながら、やはりSFとして、小説としての面白味に満ちているところがすごいのである。このあたりはクラークならではのものだ。
 次々と謎が登場し、それを解くため調査を進めると、さらに謎が深まっていく。怪物が登場するわけでもなければ、次々と襲いくる危機があるわけでもない。主人公たちは、物体の中に林立する建造物の中を順に調査していくだけ。しかし、それでも物語にはスペクタクルがあり、詩情がある。
 クラークのおもしろさはまさにそこだと思う。怪物やソープオペラに頼らなくとも(あることはあるけど)、純粋な未来予測だけで読者の好奇心を刺激し、スペクタクルを演出し、小説として完成度の高いものにしてしまうのである。
 SFとはセンス・オブ・ワンダーのことだ。よくそう言われる。そしてセンス・オブ・ワンダーとはつまりクラークのことだ、と思うのだ。


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