2002.5.31 てらしま
第四次元感応者(フォース・ディメンショナー)と呼ばれるすごい超能力者がたくさんいる世界。その中でも特にすごい力を持つ少女ラファエルと身体中サイボーグの巨漢刑事パットは、ある事件の真相を追うためコンビを組む。
『第四次元』という言葉を、小説の中で久しぶりに読んだという気がする。アインシュタインの理論が一般に広く知られるようになる以前は、てきとーにこの言葉を使っていればSFになった(たぶん)。たとえば『果てしなき流れの果に』(小松左京)の「四次元砂時計」とか。当時はそうでもなかったのだろうが、いま新たに読んでしまうと、なんとも時代錯誤の感がある。
なにが変わったのかとも思うが、強いていえば、読者の知識が増えてしまったのだろうなあ。
この作品では、なんとも自然に「四次元」といってしまう。このあたりに、抵抗のある人もいるだろうけれど。
感応者(フォース)と感覚者(サード)との間には確執があるらしく、その理由については読み進むうちおいおい語られていくのだが、なにしろ主人公たちはフォースとサードのコンビなわけで、このへんに絡む世界観も物語の重要な骨組みになっていく。
ところが、あんた……。
少し納得がいかないところがあるのだけど、まあやめておこう。
テンポがいいとはいい難いが、代わりに密度の濃い文章だ。『ニューロマンサー』を代表とする、そっち系の雰囲気をもっている。ごちゃごちゃといろいろな要素が語られていく感じは、その作品がよくできていれば、だんだんと気持ちよくなってくるものだ。
第四次元のこともそうだが、SF的な整合性などはほとんど考慮されていない。フォースの能力についてはもともと説明もないし、きっと設定もされていないだろう。むしろ、そんなことは問題ではないし、まあ、これだけめちゃくちゃをやってしまっては無理だろう。
それよりもキャラクターの活躍や心理を描くことに重点が置かれて、というよりそこにしか重点はあり得なくなっていくわけだが、なぜアメコミヒーローがソープオペラをやりたがるのか、理由がわかってくるような。
帯にあるように「本格SF」は期待しない方がいいが、わりとすぐに気楽に読めるSFアクションとしてはいいのではないだろうか。
微睡みのセフィロト徳間デュアル文庫