2001.10.9 てらしま
斬新。っていうか、斬新すぎ……。
まあ、読んだ人ならこれには賛成していただけると思うんですが……。
明治の東亰に、連続殺人事件が起こる。その背後に見え隠れする、「夜の者ども」。主人公新太郎と万造は、迷信が排除され合理性に転換されていく時代の流れの中で、連続殺人を調査していく。
つまりそういうミステリー。超常的な存在を思わず信じそうになる新太郎と、あくまでそれを否定する万造。この二人のコンビが、少しずつ少しずつ「夜の者ども」の秘密を解き明かしていくのだが、その中で、時代の狭間にあった明治という時代の感覚が描かれていく。
そして、大詰……。
斬新な結末が待っているのである。
まあ読んで納得はいく範囲(かなあ……)なのではあるけど。けっこうおもしろいし。
読んでいるうち作品世界の中に自分がいるかのような感覚になる、小野不由美独特の部分はこのころから十分に発揮されている。明治の東亰という世界とともに、「火炎魔人」「闇御前」などの夜の者どもまでを一緒に納得させられてしまうのだ。
小野不由美の世界というのは、決してすべてが心地よいわけではないし、リアリティばかりでもないが、それでも染みこんでくるような存在感がある。
最近の作品に比べると文章の力が劣る、という面はあるが、その分、今よりも作品素材への愛というか、作者のおもしろがりようが感じられて、勢いのいい小説になっているのだ。