2001.10.19 てらしま
豚足かケンタッキーかという感じのタイトルだが、もちろん違う。
毎日フットボールのことを考えて暮らす、フットボールを食って生きているかのような生活、という意味。要するになにが書いてあるかと思えば、パリを中心にヨーロッパのサッカーを見て回った、紀行というかエッセイというか、そんな感じの本だ。
とりあえずつれづれといろいろなことが書いてあるのだが、結論から言うと、一番おもしろいのは第一章、「サッカー退歩論」だった。
「サッカーは退歩している」と主張するイングランド人の老人が登場して、それで「僕」を説得しようとする。このオヤジの言葉が実に含蓄があり、おもしろい。
第一章は本全体から見ればまえがきのようなものなのだが、最後まで読んでもこのオヤジに勝てるキャラクター(というかエピソード)は登場しなかった。
サッカーは紀行文と相性がいいらしい。しかもその旅先は決まってヨーロッパの国々である。理由は明らかで、あっちでは文化や政治といったものにサッカーが直結しているからだろう。
私はヨーロッパに行ったことはないが、それが街を歩いていて感じられるとしたら確かにすごそうだ。
スポーツ紀行文の類が、他の競技ならばスタジアムの中が中心になってしまうのに対し、サッカーだけは街が中心になりうる。不思議な力を、サッカーが持っているとしか思えない。
本の話に戻そう。そうやって、ヨーロッパやアフリカを回ってサッカーの話を書いているうちは、おもしろい話がけっこうあった。一番おもしろいのはイングランドのオヤジだが、次点となるエピソードはいくつもあったのだ。
しかし、こういう本の悪い癖というかなんというか……。
終盤、話がなぜか、トルシエに及ぶのだ。
ヨーロッパのサッカーの話をしてくれ、と思いながら読み進むと、どうにも日本は決定力不足だとかサッカーがつまらないだとか、そんな話が続く。
いいのだそんなことは。スポーツ新聞を読んでいればいくらでも書いてある。
どうもこういう人たちというのは、トルシエに一言もの申したくてうずうずしているらしい。困ったものだというかなんというか。
まあ、評論家十八番の意見、「クライフのバルサはすばらしかった。だからトルシエはよくない」をやらなかっただけマシではあるのだが。一応、褒めるところは褒めているので好感は持てるし。
とはいえ、私はサッカーの物語が読みたいのだ。作者の意見を展開されても鼻白むばかりである。
ある程度は仕方ないのかもしれない。彼らだって、評論をして生活しているわけで、もの申すのが仕事なんだろうから。しかし、それがこうやって、一冊の本の価値を低めているのを見てしまうと、悲しくなるじゃないか。