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Kishin-姫神- 耶馬台王朝秘史Ⅲ
 読書

Kishin-姫神- 耶馬台王朝秘史Ⅲ
定金伸治 集英社スーパーダッシュ文庫

2003.1.29 てらしま

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既刊の評
Kishin-姫神- 耶馬台王国秘史Ⅰ・Ⅱ
 けっこう好きではあるんだけどねえ。今回はちょっと期待はずれだった。
 このシリーズの好きなところは、古事記の神話の世界と作品の中の歴史の世界が連続して繋がってしまっているところだ。
 卑弥呼(天照)が死んで、神話の世界から人間の世界へ時代は移りつつあることになっている。それを、偶然とも奇跡ともとれる出来事という形で表現している。
 現実に史料として残っている人と古事記の登場人物たちが共存していて、この世界観の中では彼らも奇跡と必然のはざまに生きているわけで、変革していく時代の雰囲気というものが感じられる、こういうのはけっこう好きなのだ。リアリティはともかく。
 つまり簡単にいえば、『帝都物語』とか、最近では『アレクサンダー戦記』(私はアニメ版しか知らないのでこの表記)とか、荒俣宏らがやっていたことをやりたいんだろう。
 ただ違うのは、主人公が女の子であること。
 ヤングアダルトの文庫、文法でこれをやってくれているところを評価している。荒俣弘の世界に「萌え」を導入する、というのはなかなかできる人がいないことでもあるし、面白いと思うのだ。
 少なくとも試みとしては興味深いと思う。
 前の2巻ではひとまず話がひとくぎりついたような形になっていたから、今回はまた新しい話が始まることになる。そのせいか、いろいろと話が出るのだが、ほとんど完結しないまま終わってしまった。一巻の本として見ても盛り上がらない。
 まあしかし、全5巻になるらしいから、3巻目くらいはちょうど谷間にあたる部分になるんだろうか。次巻に期待というところだ。
 この作者、定金伸治が歴史オタクであることは、ここまで読めば充分にわかった。次巻以降の問題はその先、すぐれたストーリーテラーであるかどうかというところに求められている。
 さらにいえば、この人がどこまで「萌え」を表現できるかどうかで、この作品が異彩を放つ傑作になれるかどうかが決まるんじゃないだろうか。今回でいえば、もう少し13歳の少女である主人公の心の揺らぎを細かく描いて欲しかった。
 とそんなことを考えているのは、私だけなのかもしれない。歴史モノなのだったらそんなの必要ないのかもしれないのだが……。でももしそうなら、「荒俣弘を読んだ方がいい」となってしまうんじゃないか。それはちょっと残念なのだ。


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