2006.01.31 23:18 てらしま
予想どおりなのだが、おもしろくなっている。ちょっとした不安だったのは、こういう怪談とか都市伝説モノがシリーズになって、インフレーションしちゃうとつまらないホラーになりさがっちゃいそうという経験なんだけど、いまのところ、まあ大丈夫だ。
主人公側の主要キャラクターどもがいまひとつ立たないのは、前作の続きなのだからしかたない。というかこのシリーズ、キャラクターが立つ前に超常現象の被害者になっちゃって、極限状態でパニックになっちゃってるので、キャラクターが立つヒマがなかった。そのあたりは構成の失敗といっていいと思う。
パニックになったキャラクターは泣いたり怒ったりして本音を吐くわけなのだが、それはともするとキャラクターの言葉ではなく作者の言葉になってしまう。よくあることだ。
だからこのシリーズでも、ここまでできちんと立っているキャラクターは、どんな状況でも自分を見失わない(と設定されてる)奴と、はじめから狂っている奴と、だれよりも強い力を持ってるからパニックになる必要がない奴。文芸部の人間たちはちと厳しく、わたしはいまだに、読んでいて誰が誰だかわからなくなる。
ただし、立っているキャラクターはたしかにおもしろい。たぶんシリーズを牽引する力をこの巻で手に入れたと思う。
都市伝説モノである。
都市伝説というのは小説と相性がいい。あるんだかないんだかわからなかったり、観念上のものであったり、集団意識とか、そういう話はたぶん、小説でやるべき話だ。
アニメ『攻核機動隊S.A.C』なんかもやっぱり都市伝説ネタだったが、アニメでやるには難しいなあという印象だった。アニメの限界を超えた量のセリフが入ってしまったり、金かけた映像があるのにストーリーはセリフでしか進められなかったり、けっきょく「なんでアニメでやってるんだろう」という感じのものになってしまっていた。ただし、サイバーパンクが小説に向いているかどうかはまた別の話だが。
Missingは、絵を必要としない都市伝説小説なのである。それも、都市伝説の面白さを勘違いしちゃった『着信あり』とか『呪怨』とか、ああいうホラーではない。
一発の映像では表現できない、都市伝説や怪談の面白さをちゃんと踏まえている、都市伝説小説なのだ。
といってこれに必要な条件がなんなのかは専門家に聞いたほうがいいだろうけど……、たぶん「ユング」とか「噂話」とか? そういう系をしっかりもりこんでジュブナイル文庫でやっているというのは、けっこうえらいのかも。
でもやっぱり、1巻で主要キャラクターの造形に失敗してるのが緒を引いてるかなあ。この人の次のシリーズは傑作かもしれないという評価は変わらず。
スタートに失敗しても、さすがに何冊も登場していればなんとかなってくるだろう。3巻はもっとおもしろいだろうし、4巻はもっと面白いだろうとは思っている。でも読んで書評書きたくなるかは疑問。