遊星ゲームズ
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ティカル
 ボードゲーム

2003.12.9 てらしま
ティカル
Ravensburger
M.Kiesling/W.Kramer
2-4人(4人)
3時間(上級5時間)

 まず、とにかくボードが美しい。うっそうとした森林が描かれたボードにタイルを置いていくことで、光が灯るように古代遺跡の全貌が明らかになっていく、この過程のビジュアルは芸術的だ。
 私はこれまで、ティカルほど美しいゲームを見たことがない。
 実はこのゲーム、私が初めて自分で買ったゲームである。なんといったって、ゲームを買って最初に見るのは箱。次はボードだ。この部分の見た目を、まず評価する。そういう意味で、私は幸運だった。
thikaru.jpg
 鬱蒼とした密林が広がるティカル遺跡に、4つの探検隊がやってきた。彼らが、いかに多くの財宝や遺跡を発見するかを競うという内容。先にも書いたが、始め、ボード上にはただ一面に広がる密林が描かれている。その上にタイルを置くことで、そこに道や遺跡が発見されていくのである。
 密林を探検して遺跡を発見していく、雰囲気が充分に出ている。眺めているだけで楽しくなってくるゲームだ。
 ルールの方は、比較的乱数が少ない、高度に戦略的なプレイが要求されるものだ。毎ターン、10AP(アクションポイント)を使って隊員を移動し、財宝を掘り、遺跡を発掘する。乱数要素はめくられるタイルだけだし、それもカウンティングが容易なので、常にある程度先を読んで行動する必要がある。
 ただでさえ頭を使い、疲れるゲームなのだが、さらに。このゲームには「上級ルール」が用意されているのである。
 この上級ルールが恐ろしい。これまでは時計回りに回っていた手番順が、今度は毎ラウンドの競りで決定されるのだ。しかも、競りに使うのは勝利得点。「勝利点を使って手番を買う」? なにかの冗談のようだ。
 上級ルールではさらに乱数要素が減り、ほとんどなくなってしまう。ほぼ完全にすべてを考えることができるようになってしまう。
 考えられるところは考えたくなってしまうのがプレイヤーというもの。いくらでこの手番を競り落としたとして、できることはなにか。その場合、敵はどんな行動をとるか。そういったことのすべてを考えてから入札価格を決定しなければゲームにならない。
 時間もかかり、恐ろしく疲れるのだが、これはとても楽しいのである。通常のルールに慣れてきたら、ぜひやってみてほしい。
 
 さて、しかし、こうなると考えてしまうことがある。
 2人でプレイする、乱数を振らない、情報が完全に公開されたゲームの場合、ゲーム開始時点ですでに勝敗は決している。もっともこれは2人のプレイヤーが互いに無限手先まで読み切れる神さまだった場合の話。現実には、チェスはまだ充分人間のプレイするゲームとして成り立っているし、スーパーコンピュータのディープブルーだって、けっきょくは人間の領域を超えられなかった。
 2人だったら、先手勝ち(神さま同士が対戦すれば必ず先手が勝つ)か後手勝ちか、引き分けかの3種類になる。これはゲームがデザインされた瞬間に決まっているものである。理系的な考え方をできる人間には、これは自明だ。
 ところで、3人以上でプレイするマルチゲームだったらどうなのだろう。
 これは難しい問題だ。もちろん、適切にデザインされていないゲームなら、「1番手勝ち」「3番手勝ち」「引き分け」ということもあるだろう。他人を妨害する手段がないゲームなら必ずそうなる。だが、なんらかの手段で他人を妨害することができる場合はどうなのだろう。
 2人の場合、相手を攻撃することはすなわち自分の勝利に直接つながる。しかし3人以上だと、自分が誰かを攻撃している間に他の誰かが得点を伸ばしてしまう。たとえ神さまがプレイヤーだとしても、マルチゲームを完全に解析することは不可能なのではないか。
 以前、そんなことを考えていたことがある。無限手先まで読み切り、最善の選択をし続ける人間同士がマルチゲームをやったらどうなるのだろう。
 いろいろ考えた末、出た答えは極めて簡単だった。
「勝利の可能性を失ったプレイヤーが勝者を決める」のである。
 今、あなたが勝利の可能性を失ったとする。残りのプレイヤー全員にはまだ勝利の可能性が残っている。ここで、あなたはどういう選択をするべきか。
 この問いに答えはない。すでに目的を失っているのだから、どんな行動をとったとしても責められるべきものではないのだ。理想的な解答はひょっとしたら「他のプレイヤー全員を刺し殺す」かもしれない。
 人の道を踏み外したくない場合は、やはりゲームを続けなければならないことになる。プレイヤー全員が無限手先までを読み切っているなら、答えは一つ。パスしようがなにをしようが、あなたの選択が勝者を決めてしまうのである。
 気づいてみれば簡単なこと。マルチゲームをやっているとよくあるシチュエーションではないか。
 長々とそんなことを書いたのは、ティカルがそういうゲームだからだ。特に上級ルールでは、必ずそういう展開になるといっていい。どの時点での誰の選択が勝者を決定したのか、明確にわかってしまうことも多い。
 これはマルチゲームの、というより多人数で人間同士が競い合う場合の宿命だ。とはいえ、負けている人間のせいで自分が負けたとなれば腹が立つ。ゲームは楽しむためにやっているのに、喧嘩になりかねない。
 本来ならマルチゲームすべてがそうなのだが、ティカルの場合は特に、そういうことを理解してプレイした方がいい。
 美しいボードで質の高いゲームをプレイすることの喜びというかなんというか、そういうものをじっくりと味わえる傑作である。なんだか最近は見なくなってしまった、大賞にふさわしい貫禄を持つドイツゲーム大賞受賞ゲームなんではないか。
to.jpgタイルリスト
 がないと上級ルールはプレイできないと思うんだけど、htmlだけじゃ6角形を書けませんや。上級をやるときは自分で準備しましょう。
cut4.jpg

ティカルを