遊星ゲームズ
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勝利への道
 ボードゲーム

 

2006.03.20 01:39 てらしま
勝利への道
VERFIIXXT!
2005年
Ravensburger
Wolfgang Kramer & Michael Kiesling
2-6人(たぶん4-6人くらい)
1時間

 けっこうハマる。まだわたしのプレイ回数が足りないのだが、これはたぶん名作に近い。
 基本的にはスゴロクなのだが、「上がる」こと自体にはなんのメリットもない。途中の道筋で得点を拾っていくのがゲームの本筋だ。つまり、むしろ上がりたくなかったりする。

 タイルが並べられている。スゴロクなので、一列だ。
 タイルにはマイナス10から8までの数字が描かれていたり、宝箱が描かれていたりする。このタイル、マス目を意味すると同時に、得点としてプレイヤーにとられていったりもする。
 タイルがとられると、空いたマスはつめる。だんだん短くなっていくわけである。
 各プレイヤーには3個づつのコマが渡されている。ターンにはダイスを一個振って、どれかのコマを動かす。
 スゴロクだスゴロク。コマが3個あるだけ。説明するのもばかばかしくなるほど理解しやすい。
 さて、得点の稼ぎかただ。
「自分ひとりしかいないタイル」から動くと、そのタイルを獲得できるのである。
 タイルに描かれた数字が、獲得した人の得点になる。これはもちろん、マイナスの数字だったらマイナス。ちなみにマイナスのほうがタイルの数はだいぶ多い。
 あと、宝箱というのがある。これはゲーム終了時に「マイナスのタイルを一つプラスにする」効果がある。
 基本ルールでは、スタート地点から

  • -1〜-8 → 宝箱6個 → 8〜1 → -1〜-10

 という順番にタイルが置かれている。
 宝箱と、続く8,7の上に「番人」なる中立コマが一個ずつ置かれている。宝を守っているのだ。
 番人は「同じマスにプレイヤーのコマが一つでもあれば」誰でも動かすことができる。
 この番人が、わりとカギを握ることになったりもするのだが。
 さて、スタート地点にすべてのコマを置いて、ゲーム開始。
 これでルールを全部説明したと思う。簡単なのだ。

 しかしこれがなかなか、いろいろと考えるところがある。もちろんダイス目勝負なのだが、しかし戦略をもって臨まなければまず負ける。
 選択肢は毎ターン、3個+αしかない。でも考える。というか悩む。
 とりたいのは、宝箱とプラスの得点タイル。とりたくないのはマイナスだが、宝箱がある(あるいはとれる見込み)なら、逆に大きなマイナスをとりにいきたい。しかし宝箱は一枚につき一つのマイナスを逆転させることしかできないので、あまりたくさんマイナスをとらされてしまうと困る。

 たとえば。二つのコマが宝箱タイル上にとまっている。
 ほぼ必ず起こる光景である。
 これはもちろん、先に動いたら負けだ。じっと我慢しつづけることになる。でもいつかはどちらかが動かなければならない。
 いかに長く動かないでいられるか。他のコマや番人を動かして、なんとかとどまりつづける。
 この、洗面器に顔をつっこんで耐えている感覚がいい。
 そうしてじっと待っていると、やがて他のコマはゴールに近づいていく。
 なにしろ、ゴールの前には10マスものマイナスゾーンが控えている。ここに侵入するころには、マイナス10をとりたい人もいれば、なにもとらずにやりすごしたい人もいる。そういう全員の思惑を読んだりしながら、しかしパスはできないので、いつかマイナスのリスクを背負って突撃しなければならない。
 コマの多くがマイナスゾーンに突入していく。中立コマが減っていき、次第に選択肢が減り、緊張感が高まっていく。
 脱落するプレイヤーが出てきたり、トップ目が現れてきたりする。
 リスクを犯して-10をとった人がいる。中立コマを動かして時間を稼ぎつづける人がいる。
 そんな中で、ひたすら「宝箱待ち」を続ける2人。彼らにもジレンマがある。3個しかないコマの1つが待っているということは、他の2つは進まなければならないということ。本当に宝箱をとれるならマイナスをとっていいのだが、それでとれなかったら大ダメージになってしまう。
 宝箱をあきらめて他のものをとりにいくことを、選ぶべきなのかどうか。
 各プレイヤーがいろんなことを考えている様子が、盤面にはっきり表現されるのである。

 ビジュアル的にも、どんどん狭くなっていく盤面というのはなんかいい。
 映画『ネバーエンディングストーリー』の最後みたいな。(別にそういう意味ではないだろうが)崩壊していく世界のような印象になり、なんかカタルシスがあるのである。
 あるいはパニックムービーのような。『グランドホテル』型の『タワーリングインフェルノ』あたりが近いかもしれない。
 このゲームにはそういう、起承転結がある。
 題材のよくわからない、抽象的なゲームだ。だから物語とはいわないが、よくできた物語のような緊張や昂奮がある。
 バリアントルールではいろいろ書いてあるのだが、たぶん、この物語性を表現するには基本ルールのタイル順が一番いいだろう。
 タイルで盤面を作るのなら、普通なら「ランダムで並べる」とする。盤面が毎回違ったほうが飽きがこないかもしれないからだ。実際このやりかたは、カタンで実績があるためよく採用されている。
 しかしこのゲームでは、あえてタイルの並び順を規定した。ランダム順の平坦なストーリーをよしとしなかった。それは起承転結を表現するため。ゲームのおもしろさを強調するためにはこの順序がいいだろうと判断したためだ。
 小説になぜ起承転結があるのか。映画になぜ起承転結があるのか。ならばゲームにもあったほうが、楽しいのではないか。
 自由度や拡張性を持たせるやりかたもあるだろうが、それははたして本当にゲームそのもののおもしろさを追求しているといえるのか。
 これは本当に、さりげないけれど職人の仕事だ。

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