遊星ゲームズ
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操り人形
 ボードゲーム

2003.11.16 てらしま
操り人形
HANS IM GL&#220CK
Bruno Faidutti
2-7人(最適5人・3人)
人数×30分

 かなり売れているゲーム。カタンの次くらいに見かける頻度が高いんじゃないだろうか。2000円と安く、しかも確かにおもしろい。ドイツゲーム大賞にもノミネートされ、「カードゲームとしては10年に一度の傑作」とかいわれているらしい。売れている要因はそんなところだろう。
 余談だが、ゲーム賞というのは、ノミネートさえされればもう評価を受けたと判断すべきものだ。大賞を獲ったゲームが一番おもしろいわけではない。おもしろさ以外にもさまざまな基準を持っているのが普通だから。むしろ、大賞を獲ってしまうのは欠点が少なく完成度の高いゲームであって、その分突き抜けたところがない。真に可能性を持った未来のゲームが欲しければ、大賞作品よりもノミネート上位作品を選ぶべきだと思っている。
 さて、2000年のドイツゲーム賞から今まで売れ続けているのだから、ロングセラーだ。もっとも私は日本の状況しか知らないけど、少なくとも日本では、いまだに飽きられることなくプレイし続けられているということの証左といえるかもしれない。
 でも。
 正直にいえば、よくもこんなゲームがと思う。私も好きなゲームだし、おもしろい、飽きない、というところに反対するわけではないんだが。
 パーティーゲームを楽しくやっている会場で「操り人形をやろう」とはいい出しづらいものがあると思う。
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 まあざっと紹介する。
 国王プレイヤーから順番に、そのラウンドで自分が演じるキャラクターカードをとっていく。このとき、カードを他人には見せず、自分だけが見て一枚選ぶ。そして左隣のプレイヤーに、残りのキャラクターカードを渡す。そうやって、全員が一枚ずつの役割カードをとる。
 マジック・ザ・ギャザリングのドラフトの要領、といえば知っている人にはわかりやすい。というより、間違いなくマジックの影響を受けたゲームデザインだろう。
 次に、国王が順番にキャラクターを呼んでいく。呼ばれた人はここで初めて自分のキャラクターを明かし、手番をプレイする。
 手番には、金貨を使って建物を建てる。より高価な建物をよりたくさん建てることのできたプレイヤーが勝者となる。
 重要なのはキャラクターがそれぞれ持っている特殊能力だ。面倒くさいから全部紹介してしまおう。
暗殺者 ・キャラクターを一人指定して暗殺する。暗殺されるとこのラウンドは手番がなくなってしまう。
泥棒  ・キャラクターを一人指定し、そのプレイヤーから金貨をすべて奪う。
魔法使い・手札全部を他人と交換する。
国王  ・王冠カードをもらえる(これを持っている人が最初にキャラクターカードを選ぶ)
伝道師 ・傭兵の攻撃を受けない。
商人  ・金貨が追加でもらえる。
建築家 ・追加で建物カードをもらえる。その上、普通は1ターンに一枚の建物しか建てられないのだが、建築家は3枚建てられる。
傭兵  ・他人の建物を壊す。
 くわしいルールをここに書いてもしかたないので端折ったが、これでもかなりめちゃくちゃなことが起こるだろうことはわかると思う。
 特に暗殺者。暗殺を喰らうと、本当に大ダメージだ。なにもできないというのは、相当に不愉快でもある。
 めちゃくちゃなことがプレイヤーの選択で起こせる、ということは、それだけ、他人に迷惑をかけなけらばならないゲームだということである。自分の得点を効率よく伸ばしていくだけのゲームではない。他人の戦略と複雑に絡まり合いながら、その中で自分が勝利を目指さなければならないわけである。
 そこが、疑問なのだ。
 私はこういうゲームは好きだ。しかし、初心者(あまり使うべき言葉ではないが)に対する敷居は高いんじゃないかと思っていた。
 他人を無条件で一回休みにしてしまう暗殺者のために、場合によっては、2回も3回も手番を飛ばされてしまう。最初にやったゲームでそんなのを喰らったら、普通なら嫌になるんじゃないか。
 他にも、傭兵や魔法使いなどで、不愉快なことがたくさん起こる。
 それなのに売れている。不思議なのだ。(まあ「ドラフティングの楽しさを知っているマジックプレイヤーにうけている」というもっともらしい仮説は立てられるけど)
 まだ戦略を考えるところにいきついていないプレイヤーとやるのは疲れる。
「初心者とやりたくない」とはいうべきでないし、そういうときは経験者が初心者をフォローすることを考えなければならない。これは初心者を勝たせるという意味ではない。プレイヤー間の関係が強いゲームだと、初心者のミスでゲームが壊れてしまう。ゲームが壊れるというのは、誰かが不条理に勝ってしまうとか単なる運勝負になってしまうとかそういうことだが、経験者はこれを防ぐプレイを心がけないと、せっかくの経験を生かして勝ちを目指すことができなくなってしまう。
 で、そういうことを考えながらゲームをやっていると、どうなるか。
 キャラクター選択の時に暗殺者が回ってきたら、必ずとらなければならなくなるのである。
 暗殺者は他人に最も大きな影響を与えてしまう選択だ。しかしこれがいないとトップをとめられない。もう経験者が引き受けなければしょうがないじゃないか。
 これはつらい。なにしろ相手プレイヤーを強烈に邪魔してしまう、悪役なのだ。しかも自分は他のキャラクターほど伸びない。
 もちろん、そういうところも楽しむのがボードゲーマー。ボードゲーマーはマゾなのだが。
 しかし、こんなつらくて不愉快なゲームが、よくもこんなに売れてるもんだなあと思ってしまうのである。世の中そんなにマゾヒストばっかりでもないだろう。やっぱり、マジックプレイヤーはたくさんいるということなんだろうか。
 ってそんなことを書いたけど、間違いなくおもしろいゲームなのは確かです。おすすめ。

to.jpgカウンティング用建物データとか
 A4ヨコで印刷してください。
 数えてみたくなるのが人情というもの。それだけ。

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操り人形を