なんというか、あっぱれなゲームだ。
今年話題のゲームらしく、確かにおもしろい。でも残念ながら、たぶんゲーム大賞はとらないと思う。古代ギリシャ半島で都市国家を建設するとはいいながら、あまりにアブストラクトすぎる。
でももう、最近のプレイヤーとしては、おもしろければなんでもいいやって感じではある。
こういうボードゲームとしてはなんか新鮮な、1ターンにできることの量が少ないゲームである。
このゲームの説明書を読んで初めて思ったのだが、いわゆるパーティーゲームでない「戦略的な」ゲームでは、ターンの行動の選択肢と量が多い。いろいろなことができるのは単純に楽しい。1ターンでできることの量が多い方が、自由度が増したように感じられるのも確かだ。でもそのかわり、ゲームはテンポを失い、次の手番までに情勢が大きく変わってしまうという弊害もある。自由度と戦略性を下げずにテンポも失わないルールが成立するなら、本当はその方がいいのである。
ワイルドライフなんか、4時間くらいかかるのに実は4ラウンドで終わってしまうのに、このゲームでは1ターンが1分かからずに終わる。
ターンが短いということは、それだけ行動に対するレスポンスが速いということ。非常にストレスが少なく、それなのに高度に戦略的な部分もある。この二つが両立されたプレイ感覚が新鮮なのだ。
各プレイヤーには30個の建物が渡されている。それを4つの山に分け、自分の前に裏向きに置く。建物にはそれぞれ建築コストが表示されており、4種類の資源カードでそれを支払い、盤面に建築していく。
手番にできる行動は、a)建物タイルを2枚めくる、b)建物を3個建築する、の2種類。めくったタイルはすぐにコストを支払って建築することもできるが、ストックとして自分の前に置いておくこともできる。
さらに「重要な建築順序」というものが設定されていて、例えば井戸の隣に畑を作るなら、コストが無料になるのである。
なにしろ、いきなり無料になるのだ。手札補充の機会は多くないのだが、半分以上の建物が結局無料で建築されるため、なんとかなる。
さらに、手番の行動が増える「アンフォラ」というアイテムがあったり、なんとゲーム盤を拡張することができたりといろいろな要素があるのだが、これらをすべてシンプルなルールの中に無理矢理詰め込んでしまってある。
やることとしては、タイルをめくり、コストを払って盤面に置く、これだけ。
もともとのルールが単純すぎて、建物を建ててる感じはないし、どのへんが都市国家なのか、さっぱりわからない。もうもとのテーマなどなんの関係もなくなってしまっている。雰囲気がないというか、そのあたりは弱点といえる。
だがゲームはおもしろい。自分のタイミングでゲーム盤を拡張できるというルールが非常に楽しいのだ。
書き忘れたが、ゲームの目的は、30個の建物タイルすべてを建てるか、盤面にプレイヤー人数分ある神殿のうち2つを自分の建物でつなぐかである。この後者の勝利条件は、邪魔をされなければあっという間に達成されてしまう。実際、初プレイではこれであっという間に終わった。
だが、慣れてくるとだんだん、この勝ち方が難しくなってくる。ゲームが長引くようになり、それにつれてゲーム盤自体が複雑に拡張されていってしまう。プレイヤーの習熟度によってまるで違うゲームをやっているような、妙な感じのゲームだ。
運の要素は強い。だが幸運に恵まれたからといって勝てるわけではない。戦略を立ててプレイしなければならないが、一度戦略が崩れても大抵は挽回のしようがある。
消耗されていくリソースを管理しなければならないのに、気づくと、手札がゼロでもなんとかなってしまったりする。
勝ち筋もだいたいの展開では人数分あると思うし、ネットの記事を読んでいると「2人がいい」とか「3人がいい」とかいわれているが、やはりこういうゲームは4人プレイのダイナミックさが加えられた方がおもしろいと思う。
プレイ時間は短めなのに二転三転するし、おもしろいゲームに必要な一通りの要素がこれだけのルールの中に入ってしまっているのは、単純にほめていいことだと思う。
シンプルなルールから多様な展開が生まれる、ゲームデザインとしては、これは見事としかいいようがないのである。ごちゃごちゃと要素を分析するより、まずは拍手を贈りたい。
抽象的すぎて始めはいまいち乗り気になれない、という欠点があるとはいえ、とりあえずは傑作じゃないかと思う。
建物名和訳
A4ヨコで印刷してください。
せめて自分がなにを建てたのかくらいわかれば気分も乗りやすいかもと思ったけど、まあいらないです。
ドイツ語などspielerとBeckenbauerしか知らないわたしが辞書で調べたものなので、怪しいところもあります。