日本のおもちゃメーカーならぜったいにやらないだろう、黒いボードである。ゲームの内容から一般的な日本人が想像する世界はパステルカラーのはずだ。パステルカラーにして、桜瀬琥姫がイラストを描いてつくりなおすべき。
ボードに、あやしげな大鍋が10個並んでいる。そこになにかほうりこんで煮ると、なにか別のものができあがってくるわけです。
やることはシンプルだ。調合のレシピをつくったり、他人のレシピで調合したり。で調合するたびに得点が入る。
このゲーム、なんだかきれいにまとまった好ゲームの予感がある。でもよくわからない。なにしろ、なにをしたら高得点をとれるのか、さっぱりわからないのだ。
プレイヤーがやることは、レシピをつくることと他人のレシピで調合すること。
調合するときは他人のレシピしか使えない。そのかわり、調合に使った材料の半分をレシピの権利者がもらえる。
で、そのレシピ。
「レシピ作るぜ」というときは、ボード上の大鍋に、材料の素材を置く。そうすると、
「青2個と赤1個で、黄色1個と灰色1個になる」
みたいなレシピができあがる。その大鍋は、以後この調合専用の鍋になってしまう。
そして、その大鍋の上に1個得点チットを置く。
このあたりが、このゲームわりきっちゃってるなというところなんだけど。
1点から10点まで、1枚ずつの得点チットが用意されている。この中から一個、好きなやつを選んでしまっていいのである。
……このルールはなんかすごいなと思った。
つまり、材料が1個だけの超簡単なレシピに、いきなり10点をつけてしまってもいいんである。ところがこれが、なかなかそうもいかないわけだけど。
なにしろ、レシピを使って調合することができるのは他人だけなのだ。
調合で得点できるのももちろん他人。レシピをつくったときにも同じ得点が入るということになっていたりもするけど、これは1回だけだし。
というわけで、あまりに安易で高得点なレシピをつくってしまうと、他人ばかりが得をする結果になってしまう。
でも、自分のレシピを使ってもらうことができれば、材料をもらえる。ということは、あまり難しすぎるレシピもよくない。
そんなあたりが悩ましいゲームである。
オークションゲームと同じ、プレイヤーがバランス調整をするゲームなのだ。
というわけでそれなりに悩ましくレシピがつくられていき、そのうち10個の大鍋はほとんど埋まる。
さあ調合して得点を稼ぐぞ、というところで。
そこで、はたと気がついたりするのだ。
他人と比べてもいいレシピを作った自信はあるのに、みんながこのレシピで調合してくれると思ったのに、
「黄色が流通してない!」
なんてことが起こる。
レシピをつかったときは権利者に材料の半分を渡すわけだが、どの色の材料を渡すかは調合した人が決める。
もちろん、できるだけ価値の低そうな材料を渡すことになる。
青の価値が低いとなったら、つまり、レシピの権利者は調合のたびに青をうけとることになってしまう。
結果、各プレイヤーの手元にある材料はどんどん偏っていく。その材料を使いたくても、レシピの組み合わせがそろわなければ使えない。そんなわけで、材料の流通はどんどん鈍くなっていく。調合したくても必要な材料がそろわないという状態に陥ってしまう。
そのあたりがなんとも、どうにもわからないところだ。
いまのところ、じつは、なにをしたら勝てるのか皆目見当がついていない。
とはいえ、なにしろこれはプレイヤーがバランス調整をするゲームだ。同じプレーヤーで何度も遊び、相場の感覚などがだんだん洗練されていったら、どうなるかわからない。
わたしはまだ数回しかやっていないが、なんとなくその場の相場観みたいなものは出来上がっていたように思う。
しかしあれが適正なのかどうかはだれにもわからない。もっと高いべきなのかもしれないし、もっとぜんぜん安いほうがいいのかもしれない。
というよりも「相場がこれ以下ならこうなる」というような、しきい値みたいなものがあるかもしれないと思っている。その場の相場の感覚しだいで、まったく違うゲームになってしまう可能性もあるような気もする。
(しかし、相場といってもゲーム中には動かないわけで。しかも大鍋は10個しかない。たぶんそのあたりがこのゲームを難しくしている。レシピを作るときは未来の需要を見こさなければならないのかもしれない)
もしも、いまわたしがもっている相場観がまったく狂っているのだとしたら。これはもう、わたしはこのゲームのことをなにも知らないことになる。ひょっとしたらすごい名作なのかもしれないし、ぜんぜん糞ゲーかもしれない。
あるいは、けっきょくプレイヤーたちの損得の綱引きで、相場はどこかにおちつくのかもしれない。
そうしてみると、プレイ回数数回でこんな記事書いてるのがまちがってるわけだけど。
とりあえず、もう少し煮詰めてみたいゲームだ。鍋だけに。