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ゲシェンク
 ボードゲーム

2006.03.06 18:38 てらしま
ゲシェンク
Geschenkt
Amigo
Thorsten Gimmler
2005年
3-5人(5人)
30分

 一枚の数字カードが、場の中央にある。これを「誰に押しつけるか」を決めるゲームだ。傑作である。
 数字は引きとってしまうと必ずマイナスの得点になる。だから、できればほしくない。
 そこで、ほしくない人は手元からチップを一枚出して、場札の上に置き、次の人に回す。もちろん、チップがなければ引きとるしかない。
 カードを引きとったとき、その上にチップが乗っていれば、それも一緒にもらえるわけである。
 チップは1個あたり、プラス1点。始め、全員が11枚ずつ持っている。
 数字カードは3〜35の、33枚。だが、そこから9枚を除いてゲームを始める。
 単純だ。あっという間に理解できる。
 とってしまった数字カードは数字分のマイナスなのだが、連番だと、その続いた数字の一番下の数だけを計算する。
 例えば「18,19,20,21」と続けて持っていれば、これは全部でマイナス18点。
 つまり、大きな数字でもマイナスにならない人がいるかもしれない。たった一つの数字が書かれただけのカードだが、プレイヤーによって価値が違うのである。
 チップがなければ引きとるしかなくなるわけなので、一枚もとらずにゲームを終えることはまず不可能である。ということは、どの数字をとるのかが重要になる。
 10前後で連番を作っていければ強いが、しかし、それをやれるプレイヤーは一人だけ。誰か一人は、30をとらなければならない。
 だが、30をとらされてしまった人が不利かというとそうでもない。30はもちろんみんな嫌がるので、チップが溜まる。
 このゲームのチップはプラスの得点にもなるのだが、それよりも「パスする権利」としての役割が大きい。例えば15枚のチップが手元にあれば、それは15回パスできることを意味する。30をとって得たチップで、以後のゲーム中一回も引きとらないことができれば、勝利の可能性は充分にある。31か29が出ればさらにいい。
 基本的には、この「大きな数字をとって得たチップでパスする」作戦と「小さめの数字で積極的に連番を作る」作戦の2種類が、戦略だ。あるいはこの中間。自分はどれくらいの数字を軸にして、どれくらいの作戦をとろうかと、考えながらやるあたりは楽しい。
 もちろん他人のとっている数字とのかねあいがあり「このあたりの数字で連番を作れるだろうか」また「この数字でこのチップ枚数なら得だろうか」と、いろいろ考える。
 やることが「とるかとらないか」の2択だけというのもいい。

 ところが、単純で簡単なゲームなのに、実はキツいゲームでもある。
 誰か一人が、たった一回、不適切なプレイをするだけで、誰か他の人の勝利がなくなってしまうという面がある。
 なにしろ、連番を作れるか否かというのは直接勝敗に関わる重要な場面なのだが、誰かが「特に理由もないけど」それをとってしまう、なんてことが起こったら、ひどい目にあう。
 基本的にプレイヤーは、得点が加算されていくゲームには慣れていても、減算されるゲームには慣れていない。だから、プラスの得点であるチップの数に目が眩んでしまい、その下の数字がマイナスであることを忘れてしまいがちになる。
 このゲームは基本的に、マイナスの得点をどれだけ小さく抑えることができるかを競うゲーム。チップの枚数はプラスだが、自分の得点がプラスになるという事態はほぼ確実にない。
 ゲーム中盤以降に「チップが20枚乗った29」を、とっていいのかどうか。
 これをとっていい場合というのは、30か28を持っている場合と、自分がまだ数字をとっていない場合だけだろう。まあ手元のチップ枚数にもよるが、ほとんどの場合はとったら負けなのだ。
 そのあたりを実感として掴みきれていないときに、よくやってしまう。自分がそれをとると負け決定なのだが、とってしまうのだ。
 わかりにくい、といえばわかりにくい。そのあたりはこのゲームの弱点である。

 でも30分弱で終わるので、納得いかなければもう一回やればいい。3〜4回も続けてやれば、だんだんとわかってもくる。
 あと、特にミスしていなくても、やたらとツいているプレイヤーが一人いれば負けてしまうわけだけど、そのあたりもやっぱり「もう一回やろう」といってしまえばいい。
 なにより、くりかえし遊びたくなるなにかを持ったゲームだ。傑作。

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