2001.5.29 てらしま
ソウヤーの代表作といえば、『さよならダイノサウルス』だ。
他の作品だって皆充分面白いし、どれも充分にSF魂を納得させてはくれる。しかし、『さよならダイノサウルス』にあった強烈な輝きと比べると、なにかが違う気がするのだ。
私の勝手な想像では、その違いというのはつまり、作者ソウヤーの「素材への愛」だったのではないだろうか。
ソウヤーの恐竜への愛情は確実だと思う。『さよならダイノサウルス』や『占星師アフサンの遠見鏡』を読めば明らかだ。
そして、彼がいわゆる「シャーロキアン」であることも、「ホームズ最後の事件再び」を読めばわかる。そして、これらの作品こそ、ソウヤーが強い光を放っている作品なのである。
そこで、『スタープレックス』だ。タイトルからも想像がつくことだが、これはスタートレックへのパロディというか、オマージュなのである。
となれば、熱心なSFファンとしても知られるソウヤーのこと、そこに愛があるのは、自ずから当然のことだ。
本を置く間もなく読み終わってみれば、それは『さよならダイノサウルス』に比肩する傑作だった。
人類の起源、宇宙の起源、新たなクォークなどの秘密が次々と明かされ、その度に新たな謎が現れる。実際、これほど多くのSF的要素を詰め込み、かつこれほど面白い作品というのを、私はこれまで読んだことがなかった(考えてみれば科学的に怪しい点も結構あるとはいえ)。
ソウヤー・ユニバースの集大成と言ったっていい。それほどの価値がある作品だと思う。とにかく読んでみてほしいのである。