六角形の台座の上にドラゴンの形が乗ったコマ。
盤面にマス目は描かれておらず、移動は長さで距離を表した「軌道タイル」でおこなう。
写真を撮ってくるべきだった。けどまあ、ウォーハンマーとかメイジナイトとかをイメージしてもらえばいい。あんな感じの移動方法を使って、レースをやるゲームだ。
うーん、楽しそうじゃないか。
盤面は何枚かのボードをつなぎ合わせて作られる。そこにはコースのレイアウトが描かれているだけ。
魔法使いが、竜の背に乗っているらしい。魔法で竜に命令して飛んでる。
スターティンググリッドに並び、各車(竜)いっせいにスタート。そして一番早く一周した魔法使いの勝利だ。
プレイヤーにはそれぞれ「速度メーター」が渡されている。速度は毎ターンのはじめに、前ラウンドの速度から±300の範囲で変えられる。つまりドラゴンといっても車と同じで、急にはとまれない。カーブに入るときのブレーキングが重要になる。
また、移動に使う「軌道タイル」は、長い(速い)ものほど方向転換できる角度の範囲が狭くなっている。これも車と同じだ。
ウォーハンマーの射撃などと同じく、あらかじめ距離を測るのは禁止ということになっている。だから、目測を誤ると壁に激突したりもする。
目測で「これくらいかな」と速度を設定し、進む。アクセルを踏みすぎて壁にぶつかったり、他の車が邪魔しているラインの外側をあえて選んだりといったレースのおもしろさを、たしかに、このルールならば再現できる。
まあそうして、毎ラウンド一番前にいる竜から順にターンをこなしていく。
基本的なところは、レースゲームのスタンダードにしたがった、わかりやすいルールだ。
ただし、マス目がないということだ。斬新、とはいわないが、こういうアナログな感じはこれだけで楽しい。
ところで、プレイヤーは魔法使いなので、魔法も使える。火の玉で前にいるドラゴンを攻撃したりできる。先行するドラゴンは基本的にどんどん進んでいくので追いつけないのだが、魔法で攻撃したりすれば追いつけるようになっている。
ドラゴンには体力があり、追突したり壁にぶつかったり、火の玉を喰らったりすると体力が減る。体力がゼロを下回ったら「負傷」して、魔法が使えなくなったり最高速度が制限されたりしてしまう。
とそういうゲームだ。
基本的には、楽しい。角度と距離を指定できる軌道タイルも、魔法も、ちゃんとバランスよくできていると思う。
これはいい題材をみつけたなあと、思ったわけなのだ。このルール自体は、新しいわけじゃないが、見事だと思う。
問題はやはり、どうしてもこのアバウトさにある。
移動のために軌道タイルをあわせていると、どうしても他のドラゴンコマに指があたってしまうときがある。ラインぎりぎりを走っているときなど、わずかに動いただけでも次以降の移動に大きな影響が出てしまうのだが、いくら注意してプレイしても、これを防ぐことは不可能だ。
ウォーハンマーとかだって、見ていれば「だいたいこれくらい」みたいな移動をしているし、誤差は移動のたびに1センチ以上ありそうなのだ。
その上これはレースゲーム。一発のミスで壁に激突してしまう、シビアな世界だ。
一番の問題はだ。
ルール上では、そんな世界をちゃんと再現できてしまっているところである。
完全にルールどおりのプレイをすることができれば、たしかに、レースをしている気分が充分に味わえる好ゲームだろう。
だが、不可能じゃないか。だってそりゃ無理だろ。
というわけで、シビアなプレイはぜんぜんできない。いいゲームだと思うのに、残念。
ボードやコマのデザインにもだいぶ問題がある。
ドラゴンコマは六角形の台座の上にフィギュアが乗っているのだが、このドラゴンが、台座からはみ出ているのだ。つまり他のドラゴンに近づくと、ルール上のコマの大きさである台座よりも先に、上のフィギュアが接触してしまう。まあたしかにフィギュアはうれしいけど、それでゲームを壊してしまっては意味がないじゃないか。
ちなみにコマはプラスチック製で、かなり軽い。
しかも、コースがかなり狭い。場所によってはドラゴン一匹しかとおれない幅のシケインもある。
ぎりぎりのブレーキングをして攻めたり、あるいはサイドバイサイドでデッドヒートをくりひろげたり、したいのに。またルール上はそういうことができるはずなのに。できないんである。やっても、他のプレイヤーのターン中にずらされてしまうので意味がない。
いい題材を見つけたのに、ルールも「魔法」の設定もハマったかもしれないのに、明らかに作りこみが足りない。なんとも残念なゲームだ。
ボードを鉄板で作りなおして、フィギュアが乗っていない六角形の、マグネットでできたコマを作って、そこまでやってからちゃんと遊んでみたい気がする。非常に可能性を感じるのだが、残念ながら現状ではまともなゲームをやれない。