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バグダッドの盗賊
 ボードゲーム

2007.02.17 19:04 てらしま
バグダッドの盗賊
Der Dieb von Bagdad
2006年
exact
Thorsten Gimmler
2-4人(4人)
60分
thx to play:game

 宮殿が6個あり、そこには盗み出すべき宝が積まれている。
 プレイヤーは盗賊団のリーダー。部下たちを宮殿に送りこみ、宝物を盗み出す。しかしこの宝、けっこうな大物らしく、どれも一人では運べないのである。宝には運び出すために必要な人数が書かれていて、それだけの人数を宮殿に集める必要がある。
 宮殿には門番がいる。しかしこの門番、黒い色の奴以外は、実は盗賊団の一味なのだ。仲間の盗賊を導くために送りこまれているのである。

bagudaddonotouzoku.jpg

 そうした舞台設定があり。
 プレイヤーはカードを使って、自分の盗賊と門番を移動させる。自分の色の門番がいる宮殿には盗賊を送りこむことができるし、宝を運び出すこともできる。
 門番が少ない宮殿ほど、盗賊を送りこむのはたやすい。具体的には、消費するカードの枚数が少なくてすむ。
 ちなみにこのカード、要するに宮殿の色である。ある宮殿に盗賊を移動したければ、その宮殿の色のカードを規定枚数消費しなければならない。そして補充されるのはもちろん山札から、ランダムである。
 基本的にはそんなゲーム。
 ただし、これがなぜだかよくわからないのだが、自分の門番しかいない宮殿では盗みをはたらくことができない。
 手番にすることは、カードを消費してコマを投入したり移動したりすること。その結果どこかの宮殿で規定人数を超えれば、宝物をゲットできる。
 そして手札補充。そのターンなにもしていなければ、1枚多く補充することができたりもする。
 すべての宝物がなくなったらゲーム終了。もちろん、一番多く盗み出した盗賊団の勝利である。

 手札は毎ターン規定枚数が補充されるが、1ターンに使用できる枚数に上限はない。そして手札の補充枚数は、そのターンなにもしなければ1枚多い。つまり、できるだけなにもせずにカードをためてから動いたほうが有利である。
 しかし、宝物のほうは、早く手に入れるほど運び出すコストが小さい。
 そのあたりのバランスを見極めて、いいタイミングで効率よく動くことを目指すゲーム……ということに、理屈ではなるのだが。
 このゲーム、インタラクションが非常に大きい。6個しかない宮殿で4人のプレイヤーのコマが動き回っているわけだし、一人の行動で盤面をがらりと変えることができてしまう。
 宮殿の門番の人数が1人変わると「その宮殿に盗賊を一人送りこむためのコスト」がカード1枚増える。やってみればわかるけど、これは大変な違いなのだ。つまり、上家のちょっとした気まぐれで致命的なダメージを受けることがありうる。というか必ずある。
 しかも、1ターンのアクションに制限がない。
 いくら計画を立てていても、上家の行動で台無しになる。計画がほとんど無意味なのだ。
 資源の産出量に差はないわけだし、基本的には、ミスをすればするほど勝利から遠くなっていくゲームだ。もっとも効率よく行動したプレイヤーが勝利する。
 インタラクションが強いと書いたが、だからといって他人を邪魔できるわけではない。どこかの宮殿をブロックしても、トップのプレイヤーがその色を狙っているとは限らないし、その色のカードを持っているとも限らない。
 それ以上にこのゲーム「行動しなければ1枚多く補充できる」のである。他人を攻撃するために行動するというのは、そのために使用するカードの枚数も含めて、非常に大きなロスになる。現実的に、なにかのついででなければ不可能だろう。
 インタラクションは強いが、狙ってやっているわけではない。どんな行動をとっても、プレイヤーが意識できないところで、他人に非常に大きな影響があるのである。
 結果的には、補充カードの色という乱数とインタラクションの強さが、相乗効果を生んで混沌を増している。他プレイヤーの選択を乱数と同等のものにしてしまっている。ルールを単純にしようとしたがための弊害だろうが、そのあたりは評価できない点だ。

 だがまあ、なにしろ1ターンでいくら行動してもいいのだ。他人の行動はインタラクションではなく乱数なのだと割りきれば「この手札と盤面でもっとも効率のよい行動」をパズル的に考える(あるいは、盤面がさらに悪くなることを見こんでもまだ動かないほうがいいと考えるか)、そういう種類のゲームにはなるだろう。実際、それほど悪いゲームではないとは思う。

cut4.jpg

バグダッドの盗賊を