遊星ゲームズ
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ビンチ
 ボードゲーム

2006.04.20 03:13 てらしま
ビンチ
Vinci
2000年
Descartes
P.Keyaerts
2-6人(4-6人?)
3時間
thx to play:game

 ヨーロッパ全土を舞台に、たくさんの民族が侵入してきて戦ってる様子をシミュレートするゲーム。これはかなり好きだなあ。でも賛否両論分かれるかもなあ。

 ちなみに『Algo』の別名がダヴィンチコードというらしく。紛らわしい。

 ヨーロッパに、わーっと海やアジアから多民族が侵入してくる。奴らはあたりの村々を蹂躙して、勝手に新たな国を作る。
 かと思えば勝手に(いやほんとに勝手に)衰退して、また他の民族に攻め滅ぼされる。
 そうやっていろいろな民族が勝手気ままにヨーロッパを闊歩する様子が、ダイナミックに再現されるゲーム。舞台としてはいつごろ? 地図が描かれたボード上にいろんな民族のコマが置かれる、そういうゲームだ。
 登場する文明は毎回ランダムに変わる。それぞれ特殊効果を持った「文明タイル」2枚の組み合わせで、文明の特徴が決まるのである。
 これが楽しい。
「農耕と将軍」の文明とか「ひたすら要塞を作る」文明とか、ランダムなのでわけのわからないものもできる。文明の種類はけっこう多い上に2枚つかうわけで、同じ組みあわせはほとんど出ない。
 というわけで、毎回違う文明がヨーロッパにやってきて、いろいろと争いをくりひろげる。

 このゲームの特徴はなんといっても「文明の衰退」を宣言できる(・・・・・)ところだ。
 これは通常のターンをおこなう代わりに宣言しなければならないので、実質上のコストがかかるわけなのだが、とにかく宣言するだけで文明は衰退する。どんなに栄えていても、プレイヤーが「衰退した」と一言いえば衰退する。
 衰退した文明の版図はボード上に残りつづけるけど、なにしろ衰退してるので、戦力は激しく弱い。しかも、もはや動かすことすらできない。他の文明に攻撃されれば、なすがままに踏み潰される。
 残骸は残ったが次第に勢力は減っていく、なんとも悲しい、いかにも「衰退」といった末路をたどることになる。
 文明を衰退させたプレイヤーは、次の文明(ボードの横に並んで控えている)を選んで、そのターンは終了。次のターンからは心機一転、新しい文明を操って繁栄を目指していくわけである。
 ……が、実は、衰退した文明のほうからも得点は入ってくるのだ。
 得点は基本的に、そのプレイヤーが支配している土地の広さに応じて、毎ターン加算されていく。この得点が、衰退した文明からも入ってくるんである。
 ということは。むしろ積極的に衰退させたほうが得点が伸びる場面があるのだ。
 ゲームとしてのキモはそのあたりになるだろう。どのタイミングで衰退させるか、現在アクティブな文明の発展性と見比べて決断していくことも重要になる。
 ていうか、それが一番重要。
 資源を確保して技術開発をして人口を増やして云々とか、そういうゲームではない。断じて違う。そういうよくある歴史ゲームとは、まったく逆のプレイを要求されるのである。
 つまり、いかに発展させるかではなく「いかに滅ぼすか」というゲームなのだ。

 文明の人口は文明タイルで決まるのだが、これははじめからそれだけの人数がいて、基本的には増えない。
 でも攻撃を受ければ減る。
 つまり、文明はまったく発展しないのである。そうなのかー。
 この変な世界観のおかげで、非常にダイナミックな展開が起こるようになっている。
 新しい民族が現れ、瞬く間に(ほんとに1ターンで)版図を広げる。でも人口は増えないので、あとは多民族との戦闘で数をすり減らしていく。
 放っておけば減る一方だし、しかたないから衰退させる。そうするとヨーロッパに新たな文明がやってきて、また他の文明を喰い荒らす。
 なにかもう、笑っちゃうくらいめまぐるしく地図が塗り変わっていくのである。まあ常に外部からいろんな民族が入ってきて争ってるあたりがヨーロッパっぽいのかな。
 文明タイルの効果もかなり個性的だ。中にはかなりでたらめな能力もある。『コズミックエンカウンター』とまではいわないが、近いものがある。ほんとに人間かお前らって感じである。
 でもそのわりに、バランスがとれている。
 たぶん、基本的に他人の土地を攻撃することしかできないルールなので、プレイヤーたちの裁量でバランスをとることができているのだろう。
 このあたりは欠点になりうるかもしれない。
 積極的にバランスをとろうとするプレイスタイルが要求され、漫然と遊ぶことができない。必ず攻撃されるので、攻撃されたことにストレスを感じる人には向かない。実はけっこう、プレイヤーを選んでしまっている。

 プレイヤーが感情移入する対象があるわけではなく、神の視点で、民族の興亡をシミュレートする系のゲームだ。その意味では、名作『チグリス ユーフラテス』みたいな感じ。プレイヤーはあくまでゲームとしてプレイするが、それはそれとして、盤面にはシミュレーション結果としての歴史が現れるのである。
 自分の王国を発展させたからといって勝てるわけではなく、立場とかなんとか、そんなものは超越した歴史の神として、勝利得点なる謎の数値を稼ぐためのプレイをしなければならない。時には王国を自ら滅ぼしたりもする、そのへんもチグリスと同じ。盤面世界の歴史を翻弄する気まぐれな神、すなわちゲームプレイヤーたちである。
 で、その歴史なんだが。
 ゲーム終了までに登場する民族はたぶん20を超える(2〜3ターンで文明は衰退するw)。つまり、それだけの外敵が次々とやってきて、ヨーロッパを荒らすのである。
 大陸の歴史って大変だったんだねえというか……。ずっと内乱しか経験してない日本では想像もつかない世界だ。
 人間とは思えないような蛮族たちの特殊能力も、当時の人の感覚ではこんなものかもしれないし。かなりデフォルメされた歴史の世界だが、妙なリアリティを持っている気もしてくる。エッセンスをうまく抽出して再現されているのだろう。
 もう少しルールやコンポーネントが整理されていたら、チグリス・ユーフラテスと同じように、名作といわれていたかもしれないのだ。

 まあ残念ながらそこまでの評価は受けなかったようだが、個人的には、かなり好きである。

cut4.jpg


ビンチを