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マリア様がみてる 真夏の一ページ
 読書

マリア様がみてる 真夏の一ページ
今野緒雪 集英社コバルト文庫

2003.4.13 てらしま

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既刊の評
マリア様がみてるシリーズ
マリア様がみてる レイニーブルー
マリア様がみてる パラソルをさして
マリア様がみてる 子羊たちの休暇
 三話入ってる、気楽なオムニバス。しかもまだ夏休みである。話はぜんぜん進まないが、ちょっとだけ次への伏線らしきものがちらほら。斬新な組み合わせの二人が対面を果たしたりとか。
 それにしてもこのシリーズ、もはや登場人物たちがふつーに生活してるだけでいいんだなあ。私もそれを喜んで読んでるわけだし。
 こう書いてしまうと簡単そうだが、たぶんこれは考える以上にすごいことだ。ふつーに生活している場面が充分面白いし、話が進まないからといって苦痛ではない。もっともこれは私の感想だ。私自身すでにファンになってしまっているので、公平な判断を下せているとは思わない方がいい。
 とはいえ、いつまでもこのままではないだろう。そういう信頼感を、このシリーズはすでに獲得している。それはたぶん、一巻に一ヶ月ずつ進む学園生活のためだ。高校生の生活には、ことに主人公が所属する生徒会の生活にはさまざまなイベントがある。好むと好まざるとに関わらず時間は過ぎ、イベントはやってくるのである。
 なにしろ順番でいくと次は一〇月。学園祭なわけで、今度こそは真面目な(?)新展開をしないわけにはいかないだろう。主人公の妹とか。
 その前の息継ぎと思えば、話が進まなくとも、あらぬ方向に脱線していっても耐えられる。ということかもしれない。
 まじめな話もあるが、へろへろとした話もある。このバランスがいい。
 たとえば前巻『子羊たちの休暇』と今回のような、お気楽で、本筋とはそれほど深く関わってこない話ばかりが延々と続いたら? もはやだいぶ安定期に入ってしまった人間関係には特別変化もなく、どのカップルもラブラブで、しあわせだなぁという話ばかりが繰り返されたら? そういうシリーズになってしまったとしたら、果たして読むだろうか?
 ……読むな。
 ああ、やっぱり俺はファンなんだ。ふーん。
 なにがいいたいかというと、しあわせな話をしあわせそうに書くというのはひどく難しいことだと思うわけで、それを続けている限り、私は今野緒雪を読み続けるだろうなあと思うわけである。
 たぶん今回のような幸せな瞬間の思い出のために高校という舞台があり、そのためにこそ人間関係のすれ違いやらなにやらが起こっていくわけで、それはここまでのところちゃんと成功している。だから別に事件がなにもなくたって、登場人物たちが思い出を作れていればいいんだろう。たぶん。


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