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ロボサピエンス
 読書

ロボサピエンス
ピーター・メンゼル+フェイス・ダルシオ 桃井緑美子訳 河出書房

2001.6.27 てらしま

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 日本はロボットの国だ。嘘だと思ったら、この本を開いてみればいい。なにしろ、紹介されているロボットの半分以上が、日本製なのだ。
 早稲田大学や本田技研の二足歩行ロボットを始めとし、さまざまなロボットが開発者のインタビューと共に紹介される。帯の「アーサー・C・クラーク絶賛」という、もはやおなじみの文句はだてではなく、かなり広範囲に、さまざまなロボットの写真が掲載されており、またその写真も、なかなかイカスものばかりなのだ。
 ただ、ロボットの技術的な側面については期待しない方がいい。むしろ、アイドル写真集のようなノリで眺めて楽しむ本になっている。
 ミーハー的な感覚でロボットの存在を楽しみ、ロボットと人間が共存する社会を夢想する。この本のコンセプトはそういうところにあると思う。ホンダのP3など二足歩行ロボットたちが冒頭に紹介され、と中、火星探査用リモートコントロールロボット、ロボットコンテスト、義手、義足などの紹介をはさみ、最後はやはり日本のペットロボットAIBOで締める、という構成も、それを表している。
 そういう視点から見ても、日本というのはまさにロボットの国なのだ。
 本書の中でも何度か触れられたことだが、日本では、ロボットはずっと人間の味方だった。これが欧米圏ではそうはいかないというのである。
 欧米では未だ「フランケンシュタイン・コンプレックス」が力を持っている。ロボットという言葉それ自体に、どこかネガティブなイメージがつきまとっているのは確かだろう。今私が思い出すだけでも、『メトロポリス』『ターミネーター』など、考えてみるとロボットが単純に人間の味方という作品はあまりない。
 対して日本では、「アトム」にしろ「マジンガーZ」にしろ、とにかくロボットといえば正義の味方なのだ。
 こうした風潮のおかげで、日本人にはロボットに対する反感がない。
 AIBOの好評が、なによりそれを表している。だって考えてみれば不気味かもしれないではないか。命を持っているわけでもない犬型のロボットが、部屋の中を勝手に歩き回っているのだから。それを25万円という金を払っても欲しいと思う人間が、日本にはたくさんいるのだ(私も欲しい)。日本はロボットのパラダイスなのである。
 さてしかし、不安に感じる部分もある。
 ホンダがP3を作った時点で、二足歩行自体の技術的な部分は完成に向かっていると思う。ここまできたら、あとは実用化だろうと思うのだ。
 ペットロボットというのは、その方向性の一つではある。とはいえ、AIBOが技術的に難しいことをしているわけではない。果たして、この本に紹介されている、さまざまな、高度な技術力は一体、どこに応用されるのだろう。まさか、二足歩行のペットでもあるまい。
 どうもいまいち、かっこいい写真から未来が見えてこない。
 カバー裏に紹介されているK・エリック・ドレクスラー(ナノテクの提唱者)の言葉は「ロボットの時代の到来に驚くなかれ」と言っている。しかし、それはまだ当分先の話なのではないかと思うのだ。


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