マストフォローのトリックテイキング。ただし、色が変わる。たいていそんな風に紹介するんだけど。
マストフォローだけど途中で色が変わる。この言葉の異常さが、だんだんおもしろくなってくる。
最近よくやっているゲームだ。
色の3原色という言葉がある。もちろん、赤、青、黄だ。そして、それらを混ぜると別の色になる。赤と青を混ぜると紫になる。青と黄を混ぜれば緑、黄と赤を混ぜればオレンジだ。
そんなことをテーマにしたゲーム。
ルールは一般的なトリックテイキングを下敷きにしている。ゲームはトリックをくりかえすことで進行する。前回トリックをとったプレイヤーがまず手札からカードを1枚プレイしてリードし、次のプレイヤーは、手札からリードと同じ色のカードをプレイしてフォローしなければならない。
そんな感じで、まあトリックテイキングを知っている相手だと専門用語を並べて説明したほうがわかりやすい。
そうでなければ、とりあえず「ウィンドウズに入ってるハーツって知ってる?」から始める。
めんどくさいからここではくわしく説明しないけど。
さてこのゲームの特徴は、色を混ぜられるところ。
たとえばリードの色がオレンジなら、オレンジをプレイすればフォローできる。そこは普通のトリックテイキングだ。
それに加えてこのゲームでは、赤と黄の2枚を「混ぜて」オレンジとしてプレイできる。
色を混ぜると、数字は2枚の合計になる。
オレンジで最強のカードは9で、それは1枚しかない。普通のトリックテイキングなら、そのトリックはとれるはずだ。でもこのゲームでは、トリックをとれないかもしれない。赤の5と黄の5を混ぜたら10ができてしまうからだ。
これが「ミックス」のルール。
もうひとつ。リードの色が原色なら、そこに別の原色を混ぜることでトリックの色を変えることができる。
例えばリードが赤だったら、自分の手札から黄を出して色を変え、手札からオレンジを出す。そんなことができてしまう。
これが「ぼかす」ルール。
そんな2つのルールのせいで、普通ではありえないことが起こってしまう。
普通ならとれるはずのトリックがとれない。普通のトリックテイキングでは「このトリックをとって、次はこれをリードして……」などと計算するのだけど、そんな計算はほとんど成り立たない。
プレイ感はだいぶ別モノになっている。
ギリギリと考えて沈黙の中でプレイする、というイメージが、トリックテイキングにはある。でもこのゲームは違う。9を出してトリックをとる計画が混色で崩され「ぎゃーなにしやがる!」という、わいわい楽しめるところのあるゲームになっている。
あと、ビッドのルールもある。ナポレオンやブリッジのように「何トリックとるか」ではなく「何色でトリックをとるか」というビッドになっている。ビッドした各色で、最低1回のトリックをとればいい。
「トリックをとらない」なんてビッドもある。ヌルビッドと呼ばれている。手札が弱すぎるときは、ヌルビッドでその場をしのぐことができる。
このビッドのルールもいい。
一般的にボードゲームを遊ぶ集まりでは、トリックテイキングは少しきついかもしれない。そんな気がする。ルールの説明はそれほどでもないが、セオリーなどの理解がないとゲームにならなかったりするあたりが難しい。
そして、ルールとセオリーを知った上でさらにビッドしなければならないというゲームも多い。
コントラクトブリッジとなるとさらにきつい。ビッディングシステムを記憶してパートナーとやりとりしなければならない。それはもう、気軽にボードゲームを遊びたいプレイヤーの許容量を超えているだろう。
そんな敷居の高さが、トリックテイキングには少しある。ゲームが、ルールだけでは成立しない難しさだ。
まあ、いわゆるボードゲームにアレンジされたトリックテイキングゲームにはいろいろと工夫が凝らされていて、たいていは遊びやすくなっているから平気なのだけど。
パラは、そんなトリックテイキングのセオリーをぶちこわすゲームだ。トリックテイキング特有の説明しづらさみたいなものは少しあるものの、まあ、やればわかる。
考えて計画して遊ぶ、知的ゲームという面は薄れているかもしれない。でもそのぶん、いきなり変なことが起こる乱数の楽しさがある。
トランプを使ったトリックテイキングゲームのプレイヤーが、もしこれを「改悪だ」といったら、たしかにそういう意見があっていいと思うだろう。
でも、いわゆるボードゲームを遊びにきたプレイヤーと遊ぶには、これくらいがちょうどいい。
かなり気に入ってる。