サイコロを振って、文明を発展させる。
文明を発展させるゲームといえば、建物を建てたり技術を進歩させたりいろいろやって拡大再生産!みたいなイメージがあるが、このゲームもまさにそういう内容だ。
そういうゲームは重そうというイメージもある。でもそこは違う。本当に30分で終わるんである。
やっぱりサイコロを振るのは楽しいんだと思う。なんとなくまたやりたくなるゲーム。
箱は小さいけど、ずしりと重い。それは、木製のペグボードが入っているから。
おおなんか豪華……と思うけど、じつはこれがそうでもない(笑)
各プレイヤーに配られるのは、ペグボードとペグと、プレイヤーシートと鉛筆。
プレイヤーシートである。
TRPGとかゲームブックとかで使うような、アレだ。
木製ペグボードの豪華さと紙……。このアンバランス感は、たぶん誰でも感じるだろう。ペグボードじゃなくていいから、普通のボードとチットでプレイしたいと思う。
コンポーネントでゲームに興味を持つプレイヤーは多い。せっかくちゃんと軽いゲームになっているのに、少し残念なところではある。
でも、プレイヤーシートには利点もある。ルールが全部、プレイヤーシートに印刷されているんである。
ルールブック自体には、あまり細かいことが書いていない。読んだときは「これだけ?」と思った。細かいことは全部、このプレイヤーシートに書いてあったのだ。
簡単な基本をおさえてしまえば、あとはプレイヤーシートを見ながらプレイできる。これは大きい。
そして、なによりこれ、完全日本語版なのである。
こういうゲームはどうしても、言語依存が強くなる。獲得した建物や進歩の特殊能力とか、そういうのはどこかに文章で説明しなければならない。日本語のプレイシートがなければ、ずっとめんどうなゲームになっていただろうと思う。
それに……。
ペグボードには「Roll Through the Ages」と書いてあるのだけど。プレイヤーシートでは少しちがって「Roll Through the Ages 青銅の時代」とあるんである。
プレイヤーシートにしか書いてないルールがあるわけだから。プレイヤーシートを変えれば、違うゲームになるはずなのである。
そういう今後の展開も、ありうるわけだなあというか、そういうふうに作ってあるのかもしれない。
とりあえずダイスを振る。
振れるダイスの数は、持っている「都市」の数。もちろん、都市はそのうち増えたりもする。
ダイスは2回まで振りなおすことができる。ただし、「ドクロ」の目は振りなおせない。
ダイスには、食料とか人とか、資源とかの絵が描かれている。出た目にしたがって、なにかが生産される。
資源を獲得したら、ペグボード上のペグを進める。
人を獲得したら、プレイヤーシートのチェックボックスに人数分のチェックをつけることができる。都市にチェックをつければダイスが増えるし、モニュメントにチェックをつければ得点になる。
毎ターン、都市の数だけの食料が消費されていく。食料が足りないと、飢饉が起こって得点がマイナスされる。
資源を売るとお金になり、お金で「進歩」を買うことができる。これには、いろいろな特殊能力が書いてある。プレイヤーシートに日本語で書いてあるから、そこから選べばいい。
だいたいそういう流れだ。やっていることはオーソドックスである。
偉いのは、生産を全部ダイスに集約してみせたところ。おかげでゲームの流れはシンプル。
日本語プレイヤーシートのこともあり、とても導入が楽だ。これも、箱からうける印象と違って。
ダイスを使うだけあって、かなりの運ゲーである。あえてそれを許容しているデザインだと思う。
というかたぶん、運ゲーであることをあえて強調しているふしもある。
ダイス目の中に「ドクロ」というのがある。これは特別な目で、振りなおすことができない。そして、ドクロの数に応じて「災い」が起こる。
その代わり、ドクロからは資源2個が出る。他の目で資源1個というのがあるので、それと比べれば非常に強い。
とそういうものなんだが。このドクロの災いが問題だ。
数に応じて、起こることがちがうんだが。
ドクロ1個の場合は、なにもおこらない。
ドクロ2個なら、「干魃」。自分がマイナス2点。
そして、ドクロ3個の場合……、「疫病」が起こる。この効果は「対戦相手全員がマイナス3点」なのである。
なぜ対戦相手? とはみんな思うが、そう書いてあるんだからしかたない。このドクロ3個を出したときは、自分自身は資源を6個生産した上、対戦相手を攻撃もできることになる。
(ちなみに、ドクロ4個とドクロ5個以上はちゃんと自分が痛い)
疫病、強いんである。
もちろん、それが出るかどうかは運次第だ。ダイスがテーマのゲームなんだから、これくらいの運はあって当然。というデザインなのかなあと思う。
じっさい、ダイス目次第でかなりの差がつく。それが不快だといわれてしまえば、しかたない。だけど、この運次第っぷりが楽しいという気もする。
やっぱり、サイコロを振ることには単純な楽しさがある。
運だけというわけでもなくて。ちゃんと文明系ゲームらしいプレイ感はある。進歩の選びかたとか、次はこんな作戦でやってみようとか、考えるところもある。作戦の選びかたで勝率を上げることは可能だ。
それでいながら、ちゃんと本当に30分で終わる。これはデザイナーがんばったと思う。
生産をすべてサイコロに集約することで、ゲームの流れをシンプルにすると同時に運の影響を強めた。運が強いと、プレイヤーの判断にいいわけが用意されるから(笑)、結果的に考慮時間が短くなる。
また、インタラクションが薄いデザインも、プレイ時間短縮に効果がある。このゲーム、もちろんインタラクションはそれなりにあるのだけど、自分のプレイヤーシートだけを睨んでいてもプレイできてしまう。他人を気にする必要が小さければ、もちろんそれだけプレイ時間短縮につながる。
なにげにいろいろ考えられている気がするデザインだ。
短時間ゲームが求められる場合というのは多い。けれど、勝敗を重視しないパーティーゲームには特有の問題があり、好まない人もいる。
そこで。というわけでもないが。
若干ゲーマー指向よりの気軽なゲームという意味で、……ドミニオンに飽きてきたときなどにいいんじゃないか。
運ゲーだとかなんだとか、いろいろいいながら、けっこうやりそうな気もしている。