遊星ゲームズ
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伝説のかけら
 ボードゲーム

2006.01.18 22:01 てらしま
伝説のかけら
2004年
遊宝堂
中村聡
3-6人(5-6人)
45分

 なんかいろいろとてきとーなのだが、けっこう悪くない。
 自分のターンには、自分の前にカードを1枚出すか、山から1枚引く。
 カードを出すと、そこに書かれている数字分が、その人の場の得点に加算される。
 つまり、手札の得点はその分さがる。
「なにいってんのあんた」と思うなかれ。これが重要なのだ。
 UNOなどと同じく、誰かが手札を使い切ったらステージ終了。そのときはふつーに、場の得点をプラス、手札に残ってしまった得点をマイナスとする。
 だがこのゲーム、終わりかたがもう一つある。
 それが「手札の得点が20点を超えたら」というもの。この場合はまったく逆に、場がマイナス、手札がプラスになる。
dennsetunokakera.jpg なるほど。手札をためるのか場に出すのか、けっこう大きなジレンマがあり、おもしろい。
 UNO系らしく、リバースとかスキップとかもある。
 ところで、UNOはパーティーゲームだから気にもしていないが、リバースもスキップも、実は強烈な攻撃だ。緻密にバランスをデザインされたゲームだったら、ありえない効果といっていい。それがこのゲームにはあるのだから、これは緻密な計算を楽しむゲームではない。計画など0.2秒で崩れてしまう。
 実際、そういう劇的すぎる状況の変化の中でげらげら笑うためのゲームと思うべきである。
 しかも。大半のカードには、なにか特殊な効果が書かれている。場に出したときに発効するものとか、いろいろだ。
 誰か一人の手札を2枚捨てさせるとか、逆に引かせるとか。
 中には「場に出せない」なんてものもある。これはそのかわり得点が高いので、手札20点を目指すときは有効になる。
 ちなみに「天和」もある
 さらには、全員の手札をとなりに渡せだとか、山札を1枚にしろだとか、なんかもうめちゃくちゃなのである。
 だが不思議と、そのメチャクチャも許容できてしまっているのだ。
 パーティーゲームではあるが、カードテキストのとんでもなさからは意外にも、ちゃんとゲームとして楽しめる。
 目標が2つある、というところがヒットなのだろうか。他人のカードは増えすぎても減りすぎてもいけないわけで、つまり上限と下限が決まっているから、メチャクチャなカードを使うときは、カードの効果がその狭い範囲に収まるだろうかと考えながら使わなければならない。常に最善の結果を狙えるわけではないが、配られてしまったカードの中で自分にはなにができるだろうかと、実はそれなりに考えるところはある。
 だから、むしろカードテキストにはとんでもないことが書かれていたほうが悩ましく、おもしろいのかもしれない。考えずにやればやれてしまうけど。
 一つの「可能性を感じる」ベースルールの上で、プレイテストと試行錯誤をくりかえした跡のようなものがうかがえる、てきとーな印象よりは手間がかかっているかもしれないゲームだ。
 ただまあ、そういうことを納得できる人とできない人がいるので「できる限り軽く」というコンセプトが感じられるわりに、プレイヤーを選んでしまっている気もする。
 つまり、UNO系の弱点でもある「次の手番を待つ間にとんでもないことが起こってゲームが終わってしまう」ことが、自分にとっては不愉快でも他のプレイヤーがジレンマのすえに出した結論なのだと、わかってくれないと厳しい。でないと、ただ次々と嵐が起こるだけの、なにがなんだかわからない遊びになってしまう。
 他人の行動を乱数と考えるか選択と考えるかというのは、実はとても大きな文化の隔たりなのである。
 というあたりを納得した上で、さらにどうしようもなく運ゲーであることも納得すれば(せ、狭い……)、多人数でちゃんと楽しめる好ゲームだと思う。

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