シンプルなボードに、コマが並んでいる。見てすぐにわかる(?)株ゲームだ。
ボードに表示されているのは、現在の株価。これが上がったり下がったりする。そしてもちろん、プレイヤーはそれを売ったり買ったりする。お金を儲けるのが目的だ。
とりあえずコンポーネントを見れば、そこまで予想できる。このゲームの場合、この予想は正しい。とても素直な株ゲームだ。
ただしもちろん、違うところもいくつかあるわけである。
それは、コンポーネントの「カードホルダー」と「投資ボード」。特にこのカードホルダーの使いかたがすごい。
カードホルダーは人数分使うのだけど、プレイヤーに配られるわけではない。プレイヤーとプレイヤーの間に置かれるのである。つまり、となりの人と共有する。
カードホルダーにはもちろんカードが立てられるわけで、一人のプレイヤーは、右側と左側2つのカードホルダーに立てられたカードを見ることができる。
これはすごい。たしかに、カードホルダーでなければ実現できない。
箱を開けたときは「ちょっと豪華になんか入ってるな」くらいに思ったのだけど。そうではなかった。ゲームのために必要な小道具だったんである。
カードホルダーに立てられているのは、株価に関するインサイダー情報。どの株がいくら上がるか、いくら下がるかの情報が書いてある。「赤+4」「青-2」とか。
まず売買フェイズがある。全員が一度ずつ、株を売るか買うかする。
その後、株価の変動フェイズ。ここで、全員が一度ずつ、株価を変動させる。左右のカードホルダーから1枚ずつカードをとり、プレイするんである。
片方は額面どおりに、もう片方は額面の半分で効力を発揮し、株価が動く。
そうやって全員が変動させながら、株を売ったり買ったりする。
ゲーム自体は大変シンプルだ。
左右が見えているというこのルールのせいで、となりのプレイヤーとの駆け引きがあったり協調があったりと、いろいろな要素が生まれている。
また、たとえば4人でやるなら世界の半分の情報が見えることになる。各プレイヤーに手札を配るゲームとは違うし、すべてのカードが公開されているゲームとも違う。情報の微妙な公開具合が新鮮だ。
さらに「投資ボード」というモノがある。
株の売買をした後、福祉団体に株を投資することができる。この株券が、投資ボードに置かれる。
この投資、投資してしまったのだから自分のお金にはならない。のだけれど、投資しないわけにはいかない。
なにしろ「ゲーム終了時に、投資した株の価値がもっとも低いプレイヤーは敗北」なのである。
このルールもおもしろい。
ただ、ゲームの完成度としてはそれほど高くない気がした。
テーマのシンプルさからすれば、もっと短時間で終わってほしいと思う。「全額・半額を選べる」では選択の価値があいまいすぎて、ゲーム性がぼやけてしまっている気もする。
投資ボードに関しては「本当にこのゲームで採用する必要があったのか?」と感じてしまった。
ネタはおもしろいが、こういう奇抜なネタをゲーム性に昇華させるには、もっとチューニングしてほしかった。
もちろんこれでちゃんとおもしろいゲームになっているし、またやってもいいと思える。だけど、このネタにはもっと上があったんじゃないかと感じる。