よくある、漢字をてきとうにあしらったエセ日本ブームにのったゲーム……ではない! これは本当に、本物の親日家が作った、日本の歴史をテーマにしたゲームである。
まあ親日家というよりは、デザイナーのディラン・カークは奥さんが日本人だそうで。ブームとは関係なく日本の文化を題材に選んで作られたのかもしれない。
ゲームとしては、いろんな問題がある気はしている。しかし、好きなゲームだ。
とにかく「本物だコレ」感がひしひしと伝わってくる。
カードには、和歌の上の句か下の句が書いてある。日本語と英語で。そう、いちいち英語に訳してあるんである。
日本語は雰囲気ある草書体で書かれているので、日本人にも読めなかったりする(笑)。
このカードで連歌を作って、場に並んでいるやんごとなき姫君たちを口説く。
いまの季節、流行のテーマ、姫君の趣味がアイコンで示されている。それに合ったカードをつかって歌を詠むと得点が高い。
歌を詠むと、姫君の心を手に入れたことになる。しかし、他のプレイヤーに邪魔されることもある。こんな歌たいしたことない! と(カードを使って)批判されると、姫君はたやすく気持ちを変える。そこで新しい歌を詠んでやると、今度はそのプレイヤーになびく。
たくさんの姫君の心を手に入れたら得点になる。これを4季節くりかえす。
とにかくインタラクションが非常に強い。どんなにいい歌を詠んでやっても、それで完璧ということにはならない。むしろ、高得点の歌ほど攻撃されやすい。
そうして互いの足を引っぱりあっているうちに、誰かに得点が入る。インタラクションの強いゲームではよくあることだが、結果的に、一番攻撃を受けなかった漁夫の利プレイヤーが勝つ。そういうゲームだ。
プレイヤーにとれる戦略はいくつか用意されている。だがそのどれをとっても、他人の攻撃次第ですべてキャンセルされてしまう。容易に。
マルチゲームには多かれ少なかれ必ずある、インタラクションの代償である。
これは必ずあるのだが、しかし、デザインで軽減することはできる。ゲームデザインに関する技術力が上がっている近年では、そこに無自覚ではいられない。
そのあたりの課題を、クリアしていない。
そうした問題点はある。
しかし、それはそれとして。手元にほしい。
日本の歴史をこれほどまじめに扱ったゲームは、見たことがない。日本のメーカーが作らなかったことが残念ではあるのだが、しかしむしろ、日本でこれが生まれることは難しかっただろう。海外だからこんなにマジメに作ったんだろうし。
普通ではありえなかっただろうこの本物っぷりは、一種の奇跡の産物だという気がする。ゲームとしてというよりも、コレクションとしてほしくなる。