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白鳥異伝
 読書

白鳥異伝
荻原規子 徳間書店BFT

2005.6.7 てらしま

amazon空色勾玉』もそうだけど、名作というつもりはないし傑作ともとてもいえない。作品の出来という点だけから見れば、明らかに評価の方が高すぎる。
 でもまあ、おもしろくないわけではない。
 前作で、一つでも大きな力を持っているっぽかった勾玉が、たくさん登場する。それを紐にとおして連ねるともっと大きな力になるんだよーという話だ。
「という話だ」とはいうものの、これがまたなかなかそういう話にならないんである。主人公の生い立ちからはじまって、例によっていろいろひどいできごとが起こって、とにかくまあ細かくいろんなことが書かれていく。それで、なるほどこういう話だったのかと判明して物語がはじまるのが、200ページも読んでからなのである。
 それまでに登場したキャラクターはあっけなく忘れ去られ、気づいてみると、それまでとはぜんぜん違う話がはじまっているんである。
 なんというか、小説作法の基本みたいなものをあっさり無視した小説だ。段落の途中で、当然のように視点が変わったりもするし。最後にとうとう現れた強大な敵は(そういう話ではないにせよ)もうとっくに忘れていたような奴だし。
 作法から外れたからいけないというものでもないし、おもしろければいいのだ。たしかにわたしはおもしろいとも思った。しかし、さすがにだ。完成度が高いとはとてもいえない。
 やけにくわしく描写したかと思えば、すごく重要な場面は書き飛ばす。主人公は、それまでさんざん悩んできたことを、たった数行で開きなおる。それで克服したはずなのに、数ページも読むとまたたいして変わらない問題がもちあがる。
 このキャラクターは本当に必要だったのかとか、こいつ全然出てこなくなったけどそれでいいのかとか、いろいろ疑問が多いのだ。
 ほんとに、それでえーんかと思う。この話に、どうして肩入れすることができようか。
 と思うのだが、しかしなぜかそれが、できないでもないのだ。でなければこんなに読まれていないだろう。
 とりあえず、二律背反とか破滅の運命とか、そういうのがあると気になるということだろうか。あのほら、CLAMPのマンガとかなんて、そればっかだし。
 とりあえず、100ページ以上もかけて構築してきた世界をあっけなく壊してみせたりする、この思い切りがいい。しかもそれがただの導入だったりする。気の利いた話なら村が燃えている場面から始めるだろうが、そうはせず、突然破滅が訪れるからびっくりする。
 そのくせ話の大筋に関わる場面は書かれなかったりするあたりは問題だと思うけど。
 そうやって目まぐるしく展開する話に、キャラクターが追いつかない。これも問題。あ、ここは体よく話の要請にしたがったなと、わかってしまう瞬間が何度もある。
 うーん、書いていると欠点ばかりが出てきてしまう。それほど欠点だらけの話なのである。前作だってそうだった。でもこうして続編を読んでいるんだし、おもしろくないわけじゃないのだ。しかしデビュー作を読んで期待したものの、続編で欠陥が広がってるあたりは不安だなあ。って10年以上も前の小説にいまさらなんだけど。


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