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Bad! Daddy1 パパに内緒で正義の味方
 読書

Bad! Daddy1 パパに内緒で正義の味方
野村美月 ファミ通文庫

2003.11.2 てらしま

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 あいかわらず、てきとーでいい。
 登場人物も全員てきとーだし、ストーリーもすごい。いったいなにを捨てればこんなものを書けるようになるんだろう。
 父親が悪の秘密結社の幹部。中学生の娘は正義の味方「スイート・パティシエール」の一員にスカウトされ、「ピンク・ミルフィーユ」となって、
 まあそんな話。やりすぎなくらいいいかげんな世界とキャラクターが特徴の作家だが、今回は特にすごい。
 デビュー作『赤城山卓球場に歌声は響く』からすると、最近は多少、まともになってきたのかなあと思っていたが、またもとに戻ったようだ。
 もちろん、キワモノが好きな読者としては、この調子でどんどん突っ走ってほしいものなのである。少し落ちついた感のあった近刊よりも、「やっぱりこうでなきゃあ」という気分だ。
 正義の味方「スイート・パティシエール」というネーミングのいいかげんさがいい。『赤城山~』もそうだったが、けっして設定に盛り上がってしまわない、むしろ、あえていい加減な名前を使うことで、世界観を深読みする楽しみ方を切りすてている。
 その分、突き抜けて破天荒なキャラクターたちの行動だけに焦点を絞る。
 その描写も、なんというか……。一線を越えてしまっているのだ。
 そこまでするのかーというところに、登場人物たちは平気で踏みこむ。ときどき読んでいる方が恥ずかしくなってしまうのだが、そんなところも含めて楽しいのである。
 正義のヒーロー戦隊の話なのに、チーム名はスイート・パティシエールだし、必殺技もいいかげんだし、そっちの話はあまりしない。あくまで主題は悪の幹部である父親との関係なのであって、他の要素はくわしく書いてもしょうがない。そういう捨て方の潔さがいい。
 とはいえ、シリーズの1作目ということもあり、いろいろと伏線は張られているようだ。それが意外に真面目そうな伏線なのだが、そこはそれ、いつものいいかげんな話ではぐらかして続くのだろうと思っている。
 それにしてもだ。「死ぬほど食べていただくわ」が決めゼリフのヒーローチームが、説明不要のパロディとして成立してしまう、日本のヒーロー文化って、すごい地平にいるんじゃなかろうか……。


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