『アベカエサル』というゲームをメビウスゲームズがリメイクしたものらしい。鉄製のコマがかなりいけてる。題材がSFになったのも(個人的には)イイ。
まあ、長い氷河期をかこっているSFの人としては、つい「歴史ネタの方が売れるのに」と思ってしまうわけだが……。なにしろ、科学っぽい話や宇宙が出てきただけで女性のほとんどは目を背けてしまうし、まともなファンであってもSFと聞くとどうしてもなにかチープでくだらないジュブナイルを想像してしまって手が伸びない。特にこういう不景気の時はいけない。SFというのはそもそもそういうものなのであって、数少ないSF専門のファンというのは、そういうチープさも経済状況もなにもかもを許容してなお科学の夢を求めてしまうヒネクレモノなのである。
そういうSFファンにしか訴求できない、こういうネタのとりかたを、あえてする必要はないのである。
また、おもちゃの業界には「黒は売れない」というセオリーがあるらしい。黒い勇者ロボがいなかったのもそのためだとか。そういえば富士見ミステリー文庫が背表紙の色を変えたのもそういうことだと思う。
こういう理屈はなにもアニメや小説ばかりの話ではない。だってそうじゃないか。ボードゲームでSFと聞けば、やっぱりあまり名作というイメージにはつながらない。あまりにヘンなゲームだったからいまでも語りぐさになっているというタイトルはあるけど(『コズミックエンカウンター』とか)。そしてやっぱり、黒いパッケージは目立たないし、なんか期待感を削いでしまうイメージがある。
なんて、つい売上のことを心配してしまうのはもちろん、メビウスゲームズのゲームだからである。日本製なのだ。日本にボードゲーム文化が育ってほしいと願う気持ちはわたしにもあるわけで、このゲームには自ずと、多かれ少なかれ、そういう役割が課せられてしまうのである。
ともかくやる気が伝わってくるのは、やっぱり鉄製のコマ。これがいい。
この銀色はもうなんかSFだし、車に似たものがサーキット上に並んでるんだから、これはレースのゲームとしかいいようがない。コマ一つでゲームと世界観を規定してしまえる、すばらしい小道具なのである。
手札からカードを出すことで自機(機といいたい)を進める。カードは1から6の数字。その数字分進めるのである。
ただし、前がつまっていて進めない場合は、そのカードを出すことができない。コマは一マスに一つしか入れず、通過もできない。コース幅が足りなければ追い抜くこともできないわけである。
また、コースは基本的に、カーブでインをとったほうがマス目が少ない。アウトばかりを通っているともちろんロスとなり、遅くなってしまう。
自分の山から補充しながら、常に3枚の手札でレースを戦う。山札のカードは全員同じ。ということは進める歩数も決まっているわけで、アウトばかりを通っているとゴールする前に燃料切れになったりもする。
というわけで、敵を妨害しながらできるだけラインを確保し、敵より速く走るのが目的である。非常に単純なルールながらいろいろとエキサイティングな状況が起こる、いいシステムだ。
そりゃあたぶん手番が早いほうが有利だろうし、カードの引き次第で絶対勝てない場面というのもある。プレイで勝率を上げることはできるだろうが、運の悪さを覆すことはできない。ゲームとしてはそういういろいろな欠点があるとは思うのだが、でもまあ、とりあえず楽しいゲームではある。がんばれ。