遊星ゲームズ
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イスタンブール
 ボードゲーム

2014/11/30 03:39 てらしま
イスタンブール
Istanbul
2014年
Pegasus Spiele
Rudiger Dorn
2-4人
60分
amazon

 ドイツ年間ゲーム大賞(SDJ)のエキスパート部門を受賞したゲーム。部下を引き連れて街を歩き回り、宝石を集める。
 なんか思うのだけど、SDJにノミネートされたり受賞したりするゲームって、もはやひとつのジャンルのようになっていると思う。これが一般ユーザに一番支持されているわけではないし、マニアに一番支持されているわけでもない。その中間くらいで、軽いというよりルールが導入しやすく、コンポーネントが最高級に豪華、というような、厳しい条件に合致するものだけが対象となる。もちろんかつてはそれが主流だったのだろうけど、いまは乖離が顕著になっている。いってみれば、ガラパゴス進化だ。本賞もエキスパート部門も傾向は同じだ。
 こう書くとネガティブな話のようだけど、そうでもない。そういうゲームを権威づけするという意味がある。
 普通にゲーマーが自分が好きなものを選んでしまうとマニア寄りになりすぎるし、かといって一般受けしやすい軽いものをと思うと今度は軽くなりすぎる。二極化なんて話がでるのは、ユーザ側の意識がそう見えさせているんじゃないかと思う。同じような事情は当然供給側にも波及するだろうし。一般受けを狙って軽くなりすぎず、しかしあくまで重くなりすぎないゲーム、いわゆる「ドイツゲーム」という言葉がこれを指している部分もあると思うのだけど、このジャンルは、誰かが権威づけして守ろうとしなければ消えてしまうんじゃないか。
 少なくとも、そういう傾向を意識した上で見るなら、価値のある賞といえるのではないか。たしかに、そうしたものがなくなってしまったら、そこはもう我々が好きなボードゲームではなくなってしまうのだから。
 テラミスティカとかを喜んでやってる自分の嗜好とは別の話だけど。最近はそんなふうに考えていて。

 急に国内の話になるのだけど。今度「ゲームマーケット大賞」という賞が新設されるらしい。これも有識者賞で、ゲームマーケットで販売されたゲームが対象になる。
 自分がこの賞に期待しているのは、SDJと同じようなこと。市場に任せておいても守れない、でも守ったほうがいい文化への貢献だ。少し過激ないいかたをするなら、文化への積極的な干渉といってもいい。これは一般的なユーザが求めるものとは違うかもしれないけど、でも有識者賞というのはそういうことだろう。
 もちろん最初からうまくはいかないだろうし、まだ方向性もはっきり決まっていないかもしれないけど。こういう賞って、業界内の人間関係賞になっちゃって有名無実化するケースが多いし、そうならないといいなあと思いつつ、でも期待しているのだ。

 イスタンブールの話だった。
 16枚のタイルを組み合わせて作られた街を、手下を連れた商人が歩き回る。各タイルにはいろいろな効果があって。商品を獲得したり、それを売ってお金を得たりする。
 目的は宝石を集めることなのだけど、宝石の獲得方法はいろいろある。商品を宝石に交換してくれるおじさんがいたり、お金で売ってくれるおじさんがいたりする。
 特徴は、手下を連れた商人の動き方とアクションの実行方法。大きな商人コマの下に、小さな手下コマを4個積んだ状態でゲームは始まる。手番には、いまいるマスから2マスまで移動でき、移動先に手下コマを1個残すことで、そのマスのアクションを実行できる。移動してアクションを実行するたびに手下が減っていく。手下がいなくなったら、もうアクションを実行することができない。
 ただし。移動先のマスに手下コマがすでにある場合は、そのコマを回収しながらアクションを実行できる。
 つまり、一度やったアクションを数ターン後にもう一度やるのが効率的な動きということになる。3つくらいのアクションをずっとくりかえしているのが一番効率がいい。
 このギミックがゲームの軸だ。ただ移動するだけで移動するだけではなく、計画的に動かなければならない。

 タイルの並べ方で、いろいろなパターンのマップを作ることができる。
 初期配置を見てどのルートにいくかを考える、ドミニオンの王国カードのようなシステムということもできる。やっぱりこのメカニクスはとても優秀だ。
 推奨の配置方法が3つ用意されているのだけど、ランダムで配置してもかまわない。個人的には、ランダムが本領だろうと思う。もっとも、デッキゲームのサプライほど劇的に変わるわけでもないのだけど。
 ゲームによって、たとえばお金を稼ぐことができるタイルとお金で宝石を買えるタイルが近くにあったら、この2つを軸に戦略を組むことができるだろう。とはいえ他のプレイヤーが近くにいると邪魔になる。このタイルを目指すプレイヤーが他にもいるなら、自分は別のことをやったほうがいいかもしれない。宝石が早いもの勝ちになっているから、そのあたりに、控えめなプレイヤー間インタラクションがある。
 そういう作りもドミニオンと同じ。見た目より軽く、配置によってゲームが変わるから何度も遊びたくなる。この見た目で、じつはドミニオンのフォロワーだ。
 ただ、そのことが欠点にもなっている。
 もう絶対逆転できない状態に、わりとすぐになる。なにしろ、宝石はどんどん高くなっていく。放っておいたら買えなくなってしまうのだ。アイテムで生産力を高めたり、いろいろなことができるのだけど、そんなことより最初に一番安い宝石を獲得したプレイヤーがそのまま勝ってしまうゲームが、わりとある。
 それと関連して、マップによっては、明らかに有利な戦略がある。これは1番手プレイヤーが必ず実行することができる。1番手プレイヤーは非常に有利だ。
 そうした問題はもちろん作り手もわかっているのだろう。このゲーム、コンポーネントの中にサイコロがある。泥縄的なゲームデザインで、あまりきれいではない。あとそれ以上に、単純に乱数を足しても1番手優位は変わらないのだ。たしかに揺らぎは作れるけど。ゲームデザインが陥りがちな罠という感じがある。
 そういうダサさがあって。大賞これでいいの? と最初は思ったのだけど、でもやってみたらおもしろいし、悪くはないと思う。もう少しうまくやれたんじゃないかと思うものの、嫌いじゃない。

 あ、あと注意点。マニュアルにある最初のゲーム用のセットアップは、最悪レベルでつまらない。使わないか、練習用と割り切って使うくらいにしとくのがおすすめ。


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