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郵便馬車
 ボードゲーム

2006.10.06 10:48 てらしま
郵便馬車
Thurn und Taxis.
HANS IM GLÜCK
Karen & Andreas Seyfurth
2-4人(4人)
60〜120分
thx to play:game

 インストを受けてもどんなゲームなのか掴みづらいと思う。ルールを把握すること自体はさほど大変でもないが、説明を受けたところで、プレイヤーが一体なにをすればいいのかがイメージできない。
 まあ郵便網を作ればよさそうなのだが、むやみに長く作ってもあまり得はない。それどころか、考えて行動しないと「いっさいなんの価値もない行動」がとれてしまうのである(これはもう、他人に影響すらほとんどしない、単なる停滞だ)。
 普通、最近のゲームは親切にできていて、プレイヤーの行動は必ず、わずかずつでも進歩につながる。得点が伸びるとか生産力が伸びるとか。
 しかし郵便馬車は、そんな親切なゲームではない。明確な目的に添った計画と状況分析が必要なゲームなのである。

yuubinnbasha.jpg ボードにはドイツの地図。その横には、6枚表向きになった地名カード。手番プレイヤーはまず、その6枚か裏向きの山から地名カードを一枚とり、手札に加える。
 次に、手札から一枚を自分の前に「郵便網」としてプレイする。これは地図上で一筆書きになるようにプレイしなければならない。一筆書きにプレイできなければ、その郵便網は開通に失敗して、すべて破棄されてしまう。
 さてその次。郵便網が3枚以上のとき「完成した」と宣言することができる。完成すると、その都市に家を置くことができる。ただし全部ではない。地図は地域ごとに色分けされており、家を置くことができるのは「郵便網の中の一色の地域の都市すべて」か「郵便網の中にあるすべての色の地域に一つずつ」のいずれか。
 で、この完成をおこなったときに得点の条件を満たしていれば、得点が入る。条件はいろいろある。

  • 完成した郵便網の長さが5、6、7以上のとき
  • 指定された地域の都市すべてに家が置かれたとき
  • バイエルン(まん中にある最大の地域)以外のすべての地域にそれぞれ一つ以上の家が置かれたとき

 他にもいくつかあるけど。ちなみに、各都市にはプレイヤー全員分の家が置ける。
 この「得点」というのが曲者で、これは重ねられた得点チップを上から順にとっていくかたちになっている。得点方法はいろいろあるが、すべて、一番最初にその方法で得点した人の得点がもっとも高い
 つまり競争なのである。
 加えて「公人の助け」というのを1ターンに一回ずつ受けられる。カードを2枚とれるとか、2枚プレイできるとか。
 感覚としては「拡大再生産」でも「限られた資源の奪い合い」でもない。「スプリント勝負」だ。
 弱めでもインタラクションがあるから単なるタイムアタックではないが、まあ競馬くらいの感じか。

 なにしろ得点はすべて場に配置されており、その他にはない。これらをいそいでかき集めるわけなのだが、そのために必要なノウハウというのが、よく考えなければわかりづらいのだ。
 考えれば効率のいい順序が見えてくるのだが、考えなければ無駄ばかりになってしまう。スプリントなので、無駄は即、敗北につながる。経験者が絶対的に有利である。
 たとえばわたしがアフリカ系トップアスリートの身体を手に入れたとして。それですぐにアサファ・パウエルと100メートル勝負をやれるわけがないのである。走りかたを知らないのだから。
 似たような面子で繰り返し遊ぶ場合、戦略開発の技術競争になる。
 もっとも効率のよい方法を知っているかどうか。それが失敗したときに次善の策をいくつ知っているか。先行逃げ切りのパターンを持っているか、ローペースのレースで勝ちきる方法があるかどうか。
 終盤に追い上げるパターンを狙うとしても、そのための布石は確実に打っておかなればならない。どの方法でもミスは敗北だし、無駄な行動は敗北だ。1ターン目から、ゲーム終了までの計画を意識して行動しなければならない。
 そういうゲームである。
 まあ運も大きいので、あるていど戦略が確定してきたら「奇跡のようにうまくいってしまったプレイヤー」が勝つというパターンが多くなりそうな気もするけど。

 基本的には、さすがは賞をとったゲームだ。おもしろい。いろんなゲームからシステムを流用していながら、ゲーム性それ自体は独特のものになっている。
 そのあたりは、『プエルトリコ』のKaren & Andreas Seyfurthらしいという気もする。どこかごちゃごちゃした感じの寄せ集めみたいなシステムながら、実は無駄がなく、なぜかプレイ感は斬新でバランスもいい。
 ただ、普通の遊びかたができないゲームだとも思う。
 なにしろこれは技術開発が必要なゲームだ。1歩目を踏み違えたらもう負けているかもしれない世界なのだから、ゲーム内の思考だけでは足りないではないか。走りかたを知る必要がある。
 数人で数回遊び、ゲームの流れがわかったら議論をすべきだと思う。そして最速の方法を捜しだし、そのパターンに勝ちうる方法をいくつかピックアップする。戦略チャートでも作り、またプレイして修正する。そうして戦略の完成度を上げていくというような、特殊な遊びかたがいいんじゃないかと思う。
『原始スープ』とか『フィレンツェの匠』とか、ああいうのと同じだ。プレイ時間も短いし「そういうゲーム」に見えないというのは問題かもしれないが。

 というわけで戦略チャートを作ろうとずっと思ってるんだけど、まあそのうちだな。

cut4.jpg

郵便馬車を