『街コロ』のグランディング。街コロもすごいなと思ったのだけど、これはもっとすごい。
江戸時代の商人になって、全国各地にある名物茶器を売買するゲームだ。茶器の需要がボードに表されていて、手に入れた茶器はそこに示された値段で売れる。売られた茶器は値段が下がり、売られなければ上がる。そのあたりはよくあるといえばある。
特徴は、その茶器の入手方法。
茶器はカードなのだけど、これがいくつかの山札として積まれている。この山札にはそれぞれ「東海道」「南海道」などと名前がついている。買い付けのために旅をするのである。
で、行き先を決めたら、その山札を手元に持ってくる。全員が山札を持ったら、合図と同時にそれを見る。一斉に。じつはアクションゲームなのだ。
一斉に山札をサーチして、買いたいものを何枚でもとる。もういいと思ったら、山札を戻して番号札をとる。この後の売却フェイズでは、この番号札の順番に売る。売られた商品は値段が下がるので、早い順番をとらないとせっかくの商品の値段が下がってしまうかもしれない。速さも大事だ。
全員が買い付けを終えたら、売却フェイズ。番号札の順番に売っていく。
売却が終わったら需要が動く。残っている商品は値段が上がり、新たな商品が需要ボードに追加される。そしてまた次のラウンド。
規定の金額を稼いだら、そのプレイヤーの勝利だ。
山札をサーチすることをゲームにしたアクションというのは、いわれてみればすごくおもしろい。それに、自然だ。なぜ思いつかなかったのか。
あと、楽しい。これが大事だろう。
どちらかといえば軽量級の、ハードコアゲーマー以外にも訴求するゲームだ。こういう市場を取り込もうとする上で、楽しさというのはとても重要だろう。
少し極論をいえば、ゲームの展開やジレンマを楽しめるのはハードコアゲーマーだけ。カジュアルゲーマーにも訴えるためにはまず、ただ参加しているだけで楽しい要素が必要だ。
同じグランディングの『街コロ』は、サイコロをふる楽しさがあった。サイコロはやっぱり楽しいし、ちゃんとそれを強調する作りになっていた。そして今回のすきものでは、山札のサーチという、これまた楽しいアクションを取り入れた。
たくさんの数を売るための方法はいくつかあるだろうけど、そのうちの一つかもしれないのが、カジュアルゲーマーに訴求するものを作ることだ。重量級のゲームでも苦にしないハードコアゲーマーは桁外れの数を買うが、人数が少ない。日本に数百人とか、その程度じゃないだろうか。だから、ハードコアゲーマー以外のカジュアルゲーマーにも買ってもらう必要がある。
そのために考えられる対策は、軽く楽しいゲームにすることだろう。事実、多くの人がやっている。だがじつはそこには矛盾があって。エヴァンジェリストとなって勝手にゲームを宣伝してくれるハードコアゲーマーがまず受け入れないと、カジュアルゲーマーはゲームの存在に気づくことができないのである。
そんな話は『「ヒットする」のゲームデザイン』という本に書いてあったのだけど。まあ必ずそうだとはいえないだろうが、そうかもしれないと思う。
つまり。軽さや楽しさを基調にしつつも、ハードコアゲーマーが受け入れられるゲーム性もちゃんとある、そういうものがいい。ということになるんじゃないか。それに、コアなゲーマーだって、楽しいものは楽しいのだ。
(「ゲーム性」というのはすっかり炎上マーケティング用語になっているのだけど、まあここではあまり気にしないように)
もちろん方法はこれだけではないだろうけど、考えられる方法の一つとはいえるんじゃないか。
そんな条件を、ちゃんと満たしているという気がするんである。それも『街コロ』に続いて。なんとも、感心する。
あと、なんというか、現実的なコンポーネントで作られている。あくまで一般的なカードとか、サイコロとか、厚紙製チットとか。
楽しさを演出する簡単な方法は、豪華なコンポーネント。大きな立体物を使うことだ。でもそれはコストがかかるし、ボードゲームのインフラがない日本ではけっこう大変だと思う。街コロとすきものは、そうした方法に頼らずに楽しさを演出できている。
これをやるためには、斬新な発想や理論が必要なはずなのだ。完成品を見れば自然に見えるのだけど、そうじゃない。自然なものこそ難しい。
かなりすごいゲームじゃないかと思うのだ。
グランディングのゲームは次も注目したい。
てらしま -2013/02/14 22:51
と思っていたらtwitterで教えていただいたんですが、同じシステムのゲームがあるそうです。
邦題がないようだけど『プレステル建築ゲーム』でいいのかな。
なるほど。やってみたい。
BGGにルールブックもありました。
得点のとりかたなどは違うようですが、山札サーチするあたりの手順はたしかに同じですね。