ケーキを人数分に切り分けるゲーム。シンプルなテーマでわかりやすい。
→のようなタイルがたくさん入っているのです。
一目で想像できるとおり、これを円形に並べて、切り分けるんである。
しかし、これがまた「11枚で円形になる」という大変やっかいなケーキで……。
手番プレイヤーはまず、タイルでケーキを作る。これはランダム。
で、それを人数分に切り分ける。
そうしたら、切り分けたケーキを下家から時計回りにとっていく。切り分けた人は最後にとることになる。
とったタイルは、「すぐに食べる」か「キープする」かのどちらかを選べる。
タイルに描かれているホイップクリームの数が、すぐに食べたときの得点。
書かれている数字は、ゲーム終了時にその種類のケーキを一番多く持っていたプレイヤーに入る得点。
誰がどのケーキをほしがっているか。そこでどう切り分けるか。とったケーキを食べるのか、残すのか。
ルールはほぼこれだけなんだが。
つまり、ボードゲームプレイヤーに馴染み深いいいかたをするなら。このケーキはケーキではなく、株券なのである。
即座に売れば3点。けれど、ゲーム終了時まで持っていて枚数がトップなら11点。なんかそういうゲームやったことある。
基本的には、すぐに食べたほうが得点が高い。しかし、そうしてみんなが食べているなら、1~2枚で11点を獲得できてしまうかもしれない。そういうジレンマと駆け引きのゲームだ。
ある程度ボードゲームの経験があれば、ルールを読んだだけで、どんなゲームかイメージできてしまうと思う。
(あとマジック:ザ・ギャザリングの経験があるプレイヤーには、「Fact or Fiction」と説明すればいい)
とりあえずルールは簡単だし、軽いし、誰とでもやれる。なにより、コンポーネントがとっつきやすいし、クールだ。
でも、ケーキが三角形の株券にしか見えない人にとっては、非常に悩むところの多い、厳しいゲームにもなってしまう。
手ごろさの奥にそういう奥深さもある、傑作だと思う。
とはいえ、出てくるケーキはランダムなので、悩んでも大差ない場合も多いわけだけど。
株券ではなくケーキを使ったところが、なによりのビッグアイデアだったと思う。
たとえばまったく同じシステムだったとしても、テーマが株だったら、対象年齢が4歳上がっている。
また、株券ではなくひとつのホールケーキを切り分けるのだというテーマを採用したために、ケーキの順序が問題になった。
株券だったらおそらく、順序は関係なく分けていいというルールになっていたはずだ。だがそうなると、これはもう完全に、詰んだ詰まないの殺伐としたゲームになってしまう。少なくとも最終3ターンくらいは全数検索しておかなければ勝てないゲームになっていただろう。
プレイヤーの自由度を下げることで、圧倒的にプレイしやすくなっている(そしてもちろん、円形に並べることのできるかたちはこれしかない)。適度に運の要素を入れることに成功している。
ケーキであるというひとつのテーマがゲーム性を規定し、そこからいろいろなものが、すべていい方向に作用している。すばらしいんじゃないか。
タイトルの意味については、↓にちょっとまとめた。
このゲーム、弱点はタイトルだ。内容はとっつきやすいのに、タイトルがいまいち呼びづらい。どうしても「あのケーキのやつ」とかいうことになってしまう。
でも、ドイツ人にとってはたぶん、そうでもなかったのじゃないかと思う。
kamata -2009/02/03 10:13
これ、いいなぁ。欲しくなってきました。
コンポーネントもテーマも子供向けだけれど、ゲーム部分の利得計算はかなり煮詰められてタイトに感じられる。ドイツ人は子供に経済/道徳感覚を教えるためにこういうゲームやるんでしょうかね?「もじゃもじゃペーター」(これはドイツの絵本ではないですが)やタイトル元ネタのような、道徳童話が大好きなお国柄だし。
ケーキが株券に見える大人には、米ハードボイルドのマフィアや汚職警官がサンドイッチに賄賂挟んでるイメージを意識してもらえばいいのでは。「『アンタッチャブル』 in Berlin」みたいな。「ウチのシマではこういうのが流儀なんだぜ」とか言いながら、揃ってクリームの中の札を咥えて引っ張り出す髭面のコワモテ男たち。
あおき -2009/03/17 21:58
これはあそびたい