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カタンの開拓者たち 戦略
 ゲーム・論考

2004.4.6 てらしま
カタンの開拓者たち
Kosmos
Klaus Teuber
3-4人(4人しかありえん)
90分

 今さら紹介する必要はないゲームだ。だから、わたしの考えるカタン戦略論でもぶっておく。

  • 2006.03.28 21:59 ちょっと加筆してみたり
 

ゲーム開始時

  • 開始時に頭に入れておくべきことは、まずどの点で他人を上回って勝つかである。ここでの選択で、以降の作戦が決定する。選択肢は4つある。

    • a)発展カード(カード作戦)
    • b)全体の生産量(平均作戦)
    • c)鉄の生産量(鉄作戦)
    • d)専門港の柔軟性(港作戦)

     通常はa)がもっとも勝率が高く、続いてb)、c)、d)の順となる。この4つの作戦のいずれにも該当しない、または序盤で条件を成立させられない初期配置をしたプレイヤーは敗北が決定する。

     すなわち、初期配置とは4人のプレイヤーに1つずつ、4つの作戦を分配する時間である。
     それが実現しない場合は、配置を考えなおさなければならない。

  • 自分の生産力がいくら大きくても、他人がもっと大きいのでは意味がない。初期配置は、他人が配置する場所をすべて予想しながら行う必要がある。

  • 鉄か麦のうち、生産力が小さい方の産地に注意しなければならない。この資源の、4・10以上の強さの生産地はもっとも重要なポイントであり、初期配置はこの土地を中心に考える。
     自分がここに開拓地を置くのはもちろんだが、加えてできるだけ、この土地の周囲に建てられる開拓地の数を減らすように配置する(むろん自分の作戦が成立する範囲内で)。こうすることで、他プレイヤーの誰かがダントツトップになってしまう可能性を低くすることができる。
     これと関連して、「島の広さ」も考えに置いておく。他の開拓地から3辺離れた距離に配置すると、盤面に置ける開拓地の数が減る。島が狭くなるのである。
     一般に、カード作戦は島が狭い方が有利であり、平均作戦は広い方が有利であるが、平均作戦で狭くする選択をとる場合もある。

  • 例外として、わたしの経験からいえることがある。
     バイオリズムというか自分の気力が満ちているときに限っては、作戦など無視して、とにかく鉄を大量に生産できつつ他人に鉄を渡さない配置もいいと思う。こうすると鉄が強力な取引材料となる。鉄はカタンにおいて絶対に欠くことのできない資源だから、他人はどこかで交換に応じざるをえない。成功したこの配置でミスなく交渉を行っていけば負けない。
     ただし、集中力と冷静な判断力が必要になる。もともと形がいいわけではないから、交渉の機会を逸すれば確実に負ける。

.作戦

 各作戦が成立する条件と目指す最終形、動きについて述べる。
 なお、いずれの作戦であっても、都市2つ以上の建設を目標とする。

.a)カード作戦

必須条件
  • 鉄、麦、羊がすべて、定常的に生産可能(注1)
  • 3:1以上の港(注2)
  • 木、泥のいずれかが生産可能
注1)
 ここでは、だいたい次のような基準で用語を設定する。
  • 生産可能:3・11以上の強さの生産力
  • 定常的に生産可能:4・10以上の強さの生産力
  • 潤沢に生産可能:5・9以上の強さの生産力

注2)
港の強さは以下の順。ただし専門港は、その資源が潤沢に生産可能な場合の強さ。
 木>羊>泥>>3:1>>鉄>麦
最終形
  • 盤面7点(6点)・最大騎士力・得点カード1枚(2枚)
動き
 初期配置でまず考えるべき作戦。最終的に目指すのは、盗賊を利用しての鉄の最大生産力確保。そのために、ライバルの鉄産地を盗賊の移動で封じる。生産力では多少劣る場合でも、騎士と独占の力で10点をかすめとることができる。
 発展カードは序盤から引き、最終的な枚数は6枚前後になる。

.b)平均作戦

必須条件
  • 全資源合計の生産力が1位
  • 木、泥、麦を定常的に生産可能
  • 鉄、羊の両方が生産可能、もしくは鉄が生産可能+3:1以上の港
最終形
  • 盤面8点・最長交易路
動き
 もっともスタンダードな作戦。盤面8点の内訳は、都市2〜3。発展カードは2枚以上必要。
 よく「街道作戦」「泥木作戦」などという表現がされるが、一般的なこうした戦い方は誤りである。カタンで、鉄を確保せずに勝つことは非常に困難だからだ。鉄を含めたすべての資源をバランスよく生産し、鉄の生産地を都市化することで初めて勝ち筋が確保されると考えるべきである。

.c)鉄作戦

必須条件
  • 鉄の生産力が単独1位
  • 麦を定常的に生産可能
  • 鉄、麦以外に1種以上が生産可能(羊が最優先)
  • 3:1以上の港
最終形
  • 盤面8点・最大騎士力
動き
 目指すところはカード作戦と同じだが、動きが逆になる。まず鉄の産地を都市化し、それからカードを引き始める(場合によって多少前後する)。発展カードの枚数は5枚前後。
 最大のライバルはカード作戦。最大騎士力がとれそうもなければ、序盤に建設した都市の生産力を活かして速やかに平均作戦か港作戦に移行する必要がある。これはカード作戦にもいえること。

.d)港作戦

必須条件
  • 木、羊、泥いずれかの生産力が、鉄作戦プレイヤーの鉄生産力を上回る
  • 最大生産資源の専門港
  • 最大生産資源以外に、鉄か麦を含む2種以上の生産が可能
最終形
  • 最大騎士力、3つ以上の都市、最長交易路のいずれか
動き
 a)、b)、c)のいずれにもならないと判断できた場合にとる作戦。4番手は選びやすい。
 街道、開拓地の建設と発展カードを、情勢を見て選んでいく。発展カードは最低2枚。

 複数の作戦を併用できた場合はより強いが、そのときは他のいずれかのプレイヤーが勝ち筋を失っている。序盤から勝ち筋を失ったプレイヤーを作ることは得策ではない。
 また、この4つ以外の作戦として以下のものなどがあるが、他に勝ち筋がない場合以外は選ぶべきではない。
 

.e)奇襲作戦

 盤面と得点カードで早めに6点を確保し、最大騎士力と最長交易路の両方を一気に確保する。すべての局面に運が必要だが、決まれば最速。都市を必要としない場合がある唯一の勝ち方。
 

.f)漁夫の利作戦

 発展カードを引かず、ひたすら盤面の得点と生産力を伸ばし、終盤、トップ争いに一歩遅れて食い下がる(狙ってできることではない)。
 勝ちそうなプレイヤーが現れると、他のプレイヤーが協力してトップをとめようとする。このとき必ず、誰も伸びない時間帯が生ずる。ここでうまく他人が邪魔し合い、その間に自分が伸びることができれば勝てる。
 なにも勝ち筋がない場合、中途半端な作戦でもトップに食い下がることができていればこれを狙える。

.初期配置の手順

  1. まず(一人目が置く前に)重要なポイントを数え、それにおおまかな順位をつける。この時点で「何番手が有利な島か」がわかる。
     以下の優先順位にしたがう。ただし「どう考えても全員がとれる鉄以外の資源」があれば、それは後回しにしてもいい。また、手番順によって優先順位が変動したりもするが、そのへんはめんどくさいので細かく書かない。まあ状況と、経験と勘次第。

    1. 鉄、麦の少ないほう


    2. 一度にとれる資源の種類
    3. 目のよさ
    4. 港へのアクセス

     つまり、目のよさは考慮するがさほど重視しない(さすがに2と12は除外したほうがいいけど)。

     1個目の開拓地は、この順位にしたがって置かれると考える。そうでなかった場合は、あなたの読みが甘かった。

  2. 全員の2個目の配置を予想し(上記4作戦のいずれかをプレイヤー全員が目指していることを前提とすればおのずと見えてくる)、自分の手番順で、いずれかの作戦を成立させることができるかどうかを考える。

    1. できる場合
       他人の初期配置よりも自分の配置が有利かどうか。有利ならば、ラッキーだ。そのとおりに置けばいい。そんなことはほとんどないと思ったほうがいいが。
       有利でない場合は、次項を検討する。

    2. できない場合(重要!)
       この場合は、重要なポイントの「となり」を考慮して全員の配置を考えなおす。
       いい位置のとなりに置くということは、普通、いい位置の数が劇的に減る。本来有利なはずだった1番手が、これをやられたために、2個目を海際に置かざるをえなくなる場合も多い(つまり、1番手が有利な展開というのは実はほとんどない)。
       これをやることで、全員の初期配置を変えてしまうことができる。
       すべての「となり」とその後の全プレイヤーの初期配置を考慮して、少しでもいい(次項参照)ポイントを捜しだす。
       時間がかかってもいい。むしろ、ここでもっとも多くの時間を使うべきである。
      「早くしろよ」と急かされても決して気にしてはいけない。あなたはいま、カタン最大のクライマックスにいるのだ。

  3. 「2人の有利なプレイヤーと2人の不利なプレイヤー」という配置は避ける。そうなってしまっていたら考えなおす。
     ただし、あなたがカード作戦を選ぶことができていて、有利なほうに入っている場合は気にしない。あなたはたぶん勝つだろう。
     多少自分が不利になっても「1人の有利なプレイヤー」の形のほうがずっとマシである。あなたがカード作戦をやっているならなおさら。トップをみんなでとめればいいのである。
    「1人の不利なプレイヤー」でもいい。この場合は、その人を他のプレイヤーが助けることができる。自分がその立場になってしまったとしても、まあチャンスはある。
     2対2という形だけは、どうしようもなくなってしまいかねないのである。これも、たいていは「いい位置」の数を調整することで回避できる。

  4. で、1個目の開拓地を置く。他の人の置きかたを見て軌道修正。

.資源の価値

 カタンには5種類の資源が存在するが、すべての資源が生産できなければ勝てないわけではない。資源には価値の差があり、それは通常、次の通りである。

  • 麦>鉄>羊>>木>泥

 資源の価値は需要と供給のバランスで変動するが、適切な初期配置がおこなわれていれば、麦や鉄の価値が暴落することはあまりない。逆に泥や木の価値はマイナス(もってるだけ損)にまで下がることもある。
 ということは、初期配置でダイス目に拘泥しても意味がない。こだわるべきは、今後のゲーム展開の中で自分が生産する資源の総価値を高めることである。島を「狭く」して供給量を減らすとか、誰もが必要とする麦を優先的にとるとか、これまでの各項で書いてきたことの意味はここにある。

 そんなことを考慮しつつ、ここではそれぞれの資源について考察する。
 

.

 序盤から終盤まで、絶えず欠いてはならない資源である。したがって、即座に専門港を確保できる場合以外は、かなりの無理をしても初期配置で生産できる形にしなければならない。
 つまり、港作戦以外では絶対に、麦を生産できない配置をすべきでない。
 逆にいえば、どうしても麦を生産できない場合、あえて角の港に初期配置してしまうことも考える必要がある。
 終了までに必要な枚数は、どんな作戦をとっても10枚以上。

.

 他の資源とはまったく性質が違う。他の資源は「発展するため」に必要だが、鉄は「トップをとるため」の資源なのである。
 勝つためにはかなりの枚数が必要となる。カタンの戦略とは、中盤以降いかに鉄を確保するかを考えるためにあるといっていい。初期配置でも優先的に生産できるようにしなければならない。
 終了までの枚数は、鉄作戦が約17枚、カード作戦で約15枚、平均作戦でも10枚程度はほしい。

.

 忘れがちだが、麦と同じく、ゲーム全体を通じて必要な資源である。ただしカード作戦以外では、始めから多くの枚数が必要なわけではない。序盤は港を確保するための開拓地1個分、1枚だけ確保できればいい。
 終了までの枚数はどの作戦でも8枚前後。

.

 生産できないとしても勝ち筋がある。土地タイル枚数が多いが、平均作戦以外では中盤以降必要なくなるため、港で鉄を作るための資源としてはもっとも有効。
 ただし、序盤に必要(2枚)な資源であることを考えると、泥か木の少なくともいずれかは自力で生産できる初期配置をすべきである。
 カード作戦、鉄作戦では、中盤までに4枚確保できればそれ以上は必要ない。

.

 木とほぼ同様。ただし土地タイル枚数が少ないため、港用としては一歩劣る。

.交渉

  • 基本的に資源の交換は、互いに得をする。したがって、トップと目されるプレイヤーとは、自分が逆転できる場合以外は決して交換をしてはならない(←これ超重要)。

  • 相手が生産できない資源は、基本的には出さない。相手もa)〜d)のいずれかの作戦を元に初期配置をしたはずであり、資源が生産できないことを織りこんで勝利への道筋が計画されている。そこに資源を出すということは、相手プレイヤーの勝利を大幅に近づける行為である。
     自分にとって重要な局面の場合と、交渉相手を引き上げるべき場合(その人とトップとの差がつきすぎているとき。見比べるべきはトップとの差であって、「この交換の損得」は考える必要がない)に限り、こうした交渉は行うべきである。

  • 上と同じ理由で、自分が生産を独占している資源はできるかぎり出さない。充分に価値が高まるのを待つか、交易に回してしまうほうがマシ。

  • そもそも相手を伸ばしてしまうことを考えると、プレイヤーとの資源交換はできる限りひかえるべきである。ただし、他人同士で頻繁に交換が行われている場合は、自分も交換を行わなければ乗り遅れる。

  • トップのプレイヤーと平気で交換を行うプレイヤーがいる場合、自分がカードを多く引いているか、自分がトップでない限りはあきらめるしかない。どうしてもあきらめられないのならば、ゲームをとめて大きな声で力説してみるか。いずれにしろゲームのルールの中ではどうしようもない。これはカタンに限らずマルチゲームの宿命である。
     これを回避するためにも通常は、初期配置ではまず、騎士で情勢をコントロールできるカード作戦を考えるべきである。

 以上が、わたしにとってのカタンだ。もちろんもっと書くことはあるが、詳細に論じ始めるといくらでも書けてしまうので(ボードゲーマーなら誰でもそうだろう)やめる。
 とくにゲーム中盤以降のことについてはなにも書かなかったが、カタンはすでに戦略がかなり開発されており、序盤の占める割合が非常に大きくなっているゲームだ。戦略と最終形を考えた初期配置を行うことがもっとも重要な要素なのである。
cut4.jpg

.コメント

[2007.09.16 10:30]min :
 勉強になりました。なるほどなあ


[2007.09.16 21:16]てらしま :
 ありがとうございます。
 でもいま読むと偏向してるところもあるなあと思うので(笑) 全部は信じないほうがいいかもです。


2008.10.23 22:51 anonymous :
面白かったです

ちょこちょこ実践してみますww


カタンの開拓者たち 戦略を