冒険者たちがダンジョンに潜って財宝を集めるゲームなんだけど、これがひどい。
まず、ゲーム終了条件は冒険者たちが全員死ぬこと。全員死んだ時点でもっとも多くの財宝を持っていたプレイヤーの勝利だ。いろいろな能力を持った冒険者が登場するのだけど、けっきょく最後には死んでしまう。悲しい。
プレイヤーはひとりの冒険者を担当するのだけど、その決め方がまたひどい。ここがゲームの肝だ。
人数分の冒険者が場にいる。最初のプレイヤーはそこから、ひとりを選ぶ。次のプレイヤーは、場に残った冒険者を選んでもいいのだけど、他のプレイヤーが持っている冒険者を選んでもいい。
他のプレイヤーが持っている冒険者を選んで獲得したら、そこに1個以上の「自惚れトークン」をつけなければならない。
「自惚れトークン」である。
ちなみにこの訳はゲームフィールドによるもの。この言葉がとてもいい(笑)。原語は boasting なので、大言とかほら吹きとかそんなニュアンスだろう。
自惚れはもちろん、悪い効果なのだ。つくと弱くなる。でも、多少自惚れてもそっちのほうが強いと思ったら、他のプレイヤーから奪う。
人気のある強そうな冒険者はひっぱりだこになる。そしてどんどん自惚れていくというわけだ。
一種のオークション的なシステムになっている。強い冒険者ほど人気があるから、弱くなる。理屈上、最終的には横並びになるはずだ。
テーマはバカだけどすごくいい。バカだけど。
自惚れトークンには6種類ある。
つまり、
「俺ならあんなダンジョン、朝飯抜きでジャグリングしながらでも潜れるぜ」
とかそういう。酒場で大口を叩いていたら引っ込みがつかなくなったのだろうか。
冒険者は、クラス(職業)と武器の2枚がセットになっていて。この組み合わせ次第で、強さにだいぶ差が生まれる。とても強かったり使い物にならなかったりする。
でもその差は、自惚れで埋めろと。
せっかく強い冒険者がいても、そういうのは大人気になるから有頂天になって、どんどん自惚れてしまう。二日酔いで片手縛りでジャグリングしながらダンジョンに潜ることになったりする。
この冒険者の選び方が、ガントレット・オブ・フールズのほとんどすべてなのだけど。
さて、各プレイヤーが担当する冒険者を決めたら、いよいよダンジョンに入る。イベントカードをめくって、たいていはモンスターが出るから戦う。倒したら財宝が手に入り、攻撃を防御できなかったらヒットポイントが減る。
ここではもう、プレイヤー間のインタラクションもほとんどない。協力もしない。ほとんどソロプレイだ。クラスや武器の能力を使うかどうかという選択はあるが、それも大したことはない。
全員が死んだらゲーム終了。一番多く財宝を持っていたプレイヤーの勝利。
ヴァッカリーノといえばもちろんドミニオンなんだけど。じつはこの人けっこうバカだよねというのがわかってきた。ネファリアスとかガントレット・オブ・フールズとか、こっちが本性だろと思う。
ゲームデザイナーとしての特徴はなんといっても「毎回違うゲーム」という部分。必ずゲーム開始時のランダムが入っている。このゲームもそうだ。冒険者はクラスと武器1枚ずつの組み合わせで表されるのだけど、クラスも武器も何十枚も入っている。でもゲームで使うのは、プレイヤー人数分だけ。組み合わせ数はすごく多い。
この方式の利点はリプレイ欲求が高いこと。でもそのためには1回のプレイが楽しくないといけないし、短く軽い方がいい。そのあたりも徹底しているのがこの人のいいところだ。ドミニオンにしろキングダムビルダーにしろ、開始時のランダムのために多様性を確保するための要素数は残すが、残りはできるかぎり簡単にしている。
ガントレット・オブ・フールズも、そんなことに特化したゲームだ。ルール自体の量が少ないというわけでもないが、とにかく直感的でわかりやすい。収束性が悪い場合が若干あるが、たいていは早く終わる。
だいたい2回やらないとゲームになった気がしないから2回はやる。ふつうに2回目をやろうと思えるし、そういえるゲームだ。
バカゲーは好きだし、受けがいいから卓も立ちやすいのだけど。バカだけに調整が甘いことが多くて、収束性が悪くゲームが長くなるなんてことがよくある。本当は、バカゲーはネタの新鮮さが残っているうちに短く終わってほしいのだけど。
こういう短時間で完成度の高いバカゲーは貴重だ。意外と、適度なものは少ない。
けっこうお気に入り。