遊星ゲームズ
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キャッチアウト
 ボードゲーム

2010/07/03 03:01 てらしま

 で、きのうの続きというか。
 効率を極めたら、それはもうゲームの要素とならない、というようなことを書いた。その話、このキャッチアウトでも考えてしまったんである。

 ファブ・フィブという傑作ゲームがあった。あれを連想するシステムだ。
 3枚の数字カードを渡される。この3つの数字を見て、裏向きに、次のプレイヤーに渡す。
 このとき、数字を宣言する。この宣言は嘘をついてもいい。
 渡されたプレイヤーは、ダウトを宣言できる……というのは、ファブ・フィブの場合。キャッチアウトでは「嘘だろ」だけではなく「本当だろ!」とも宣言できるんである。
 この宣言のことを「チャレンジ」と呼ぶんだが。チャレンジして、当たったら得点。外れたら相手の得点。
 カード枚数のチャートがついていて、カードがすべてなくなったらゲーム終了だ。つまり、残りカードがなにかを憶えておくと有利になる。
 ブラフを判断するための条件は、ここにある。いわゆるカウンティングが重要な、記憶力のゲームである。
 そういうゲームだ。

 さてここで問題だ。嘘か本当かを、見抜くための材料はあるだろうか。

 ゲームマーケット2010のあと、なにやら盛り上がっていた話題があった。「ストレイシーフ問題」とでもいおうか。
 ストレイシーフも同じようなダウト系ゲームなのだけど。嘘をつくことに、まったくリスクがない。本当のことをいっても嘘をいっても、差がない。
 これはゲームなのか? そんな議論があった。
 @kubotaya氏がTwitter上の発言をまとめている。

 遊びとして楽しくないとはいえない。ゲームとしての楽しさはないかもしれないが、遊びとして成立することはもちろんありうる。
 だが、あくまでゲームとして評価するなら。
 わたしの立場としては、あれはゲームではない。
 というか、ゲームじゃないものは他にもけっこうあるし……。

 きのうの話を発展させることになるのだけど。
 ストレイシーフには、インタラクションがある。しかし、ブラフを判断するための材料が存在しない。読めないインタラクションは運と同じ。ジャンケンと同じである。
 ジャンケンがゲームかどうかというと、これもいろいろな意見があるはずだけど。このサイトの立場では、ゲームではないとしている。

 ちなみにファブ・フィブでは、チャレンジは「嘘だろ」しかできない。また、カードを次のプレイヤーに渡すとき、渡されたときよりも大きい数字を宣言しなければならないという絶妙なルールがある。これが大きな判断材料となる。
 嘘をつかなければならない場面があったり、それを推理したりといった、よりブラフゲームであることを強調した作りになっている。

 なんか他のゲームのことばかり書いてるけど。キャッチアウトの話に戻る。
 キャッチアウトは、記憶力のゲーム。正確にカウンティングしていれば、必ず最大の効率でプレイできるゲームである。
 これはきのうも書いたけど。効率には上限がある。このゲームの場合、54枚あるカードをすべて記憶していれば、それが上限だ。
 そんな神のプレイヤーだった場合。カードの残り枚数から考えて、嘘か本当かを判断できてしまうような宣言は決してしない。逆に、判断できる局面では必ず嘘を見破る。
 そうしたプレイヤーだけで卓を囲んだ場合、嘘か本当かを見破れるだろうか?
 チャレンジに成功する確率は、ほぼ必ず50%。判断材料はない。つまり、ジャンケンと変わらない。
 記憶力が完全だという仮定をおくなら、キャッチアウトもストレイシーフと同じなのだ。
(本当はこのゲーム、各プレイヤーに情報量の差がある。だからそこでゲーム性を生じる可能性はある)
 もちろん、人間の記憶は完全ではない。少なくともわたしにとっては、ゲームである部分が充分に残っているのだけど。しかし、54枚すべてとはいわなくても、重要なところをしぼって憶えきってしまうプレイヤーはいるだろう。棋士とかにやらせれば、本当に運勝負になるんじゃないだろうか。
 この「ストレイシーフ問題」、じつは意外と多くのゲームが抱えている。
 そんなことを考えた。

 まあ、記憶力がなくても、50%のチャレンジに成功するかどうかという場面が多いゲームだ。
 判断材料は、ゲームトークンではなく相手の顔、という面も意図されているだろう。
 場の「盛り上がり」などは、ゲームの論理だけでは語れない。ボードゲームはコミュニケーションツールだといったとき、多くの場合はそうした、ゲーム外の要素を含んでいる。
 キャッチアウトも、そうしたところのあるゲームなのかもしれない。
 わたしがプレイしたときは、ファブ・フィブをやったことがあるプレイヤーが多かった。だからだろう。ルールを聞いて首をかしげる姿もあったのだけど。
 じっさいにプレイしてみたら、予想よりもずっと盛り上がった。ファブ・フィブとは、意外と楽しさの質が違うかもしれない。

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キャッチアウトを